伝説の勇者の伝説 #008『エスタブール反乱』

ネルファ国境付近
「で、何なんだこれは?」
「だんごに決まっているだろう」

とことで、目の前には大量のだんごの箱が。それはフェリスが買うのではなく、ライナが買うことになるのだという。
全ては先日の失敗の詫びによるもの。

「意味もなく砦に潜入させるわ、せっかく見つけた勇者の遺物を使いこなせず置いてくるわ。これから毎日、だんごを買ってもらうからな」
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代償はとてつもなく大きなものになってしまった。
しかし、ライナに拒否権はない。フェリスに剣で脅され、仕方なく買うことを承諾する。だんご店ぼろ儲けですな。

「クソォ! これも全部シオンのせいだ!」

ライナはいつものごとく、行き場の無い怒りをシオンに向ける。
「あぁあ……今頃城でいいもん食って、のんきに昼寝でもしてんだろうなぁ……」



ローランド城 会議室
ライナの言うようなのんきなことは一切なく、シオンはある問題に向き合っていた。
それは、エスタブール反乱の問題。とある貴族は、属国であるエスタブールの王や貴族にローランドでの地位を与えたことが反乱を生んだと、シオンは甘いのだと訴える。
それも一理あるのは確か。しかし、迅速な対応を望むのは酷なところでもあるのだが、シオンは対策はもう練ってあるという。首謀者も調べはついているとのこと。

「エスタブールのかつての国王の一人娘、ノア・エン嬢だ」

詳しいことはミランが説明する。
情報によるとエスタブール側の兵の数は約5万で、エスタブールと隣接する領地の方々にはこの城に避難するよう進言する。しかし、プライドの高い貴族は、領地を踏み荒らされることを好まない。

「何か見られて困るものでもおありになるのですか?」

それに、別に無理に避難してもらわなくても構わないところ。
ミランにそういったことを言われ、貴族たちが言葉が出なくなったところで、ミランは自分が一軍を率いて反乱鎮圧に向かうと申し出る。

「いや、今回のことは、クラウ・クロム少将に任せる」

それがシオンの判断だった。
ミランには情報の収集と伝達を頼み、クラウを補佐させる。クラウはそれを拒もうとするが、これはシオンからの命令。クラウもミランも、それに従うほかない。



会議が終わった後、ミランはどういうことなのかをシオンに問う。

「この反乱。仕組んだのはお前だろ」
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シオンは気付いていた。

「息のかかった者に反乱を起こさせ、エスタブールの反ローランド勢力を一掃する。ついでに、戦争を口実に各領地に兵を送り、反国王派の貴族たちの不正も探るか」

それを知った上で、シオンはミランをどうもしない。彼に彼なりの仕事を託すのみ。



エスタブール軍 最前線要塞
エスタブールのかつての王は、ローランドから提示された地位と安全とを引き換えに国を売った。
今は皆、新たな王ノア・エンを慕っている。彼女は、この戦に勝てなかった時のことを恐れると同時に、本当に戦う必要はあるのかと疑問を抱く。

「国などどうでもよい。それより民だ。これで本当に民が幸せになれるのか? 無闇に血を流すだけではないのか?」

ノアは民が幸せに暮らせることだけを願う。それは彼女の側近であるサラウェル・セイルの教えでもあったが、今はまだエスタブールの勢力が大きいとことで、ノアは今のサラウェルの言葉を信じることにする。

『誰もが笑って暮らせるような、誰もが幸せになれるような、そんな国が作りたい』
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無邪気にそう語っていた自分を肯定してくれたサラウェルを信じて……


「これより、ローランドとの戦闘を開始します。エスタブールの独立を、この手に取り戻すのです!」

ノアのその宣言により、戦闘は開始される。



クリアド伯爵領 城
激しい戦闘が開始される。部隊を指揮するクラウは、全軍を進める。

画像
クラウは不思議な力を持った右手で相手を次々と倒していき、ついには相手の指揮官をその手で殺める。

「てめぇらエスタブールの指揮官は、俺がぶっ殺したぞ。これ以上抵抗すれば皆殺しにする」

血に染まったその赤い指こそ、紅指のクラウと呼ばれる所以。
戦局はローランドが有利に進める。


動きが読まれてるかのように次々と敗れていっているとことで、エスタブール国内では意見が飛び交う。
その中で、ノアは紅指のクラウが極力殺さず降伏させていることに注目する。

「それがローランドの戦い方、英雄王シオン・アスタールの意思ならば、やはりこの戦いは……」

意味がないのかもしれない。
しかし、戦争を始めてしまった以上、その程度の憶測で戦争を止めることはできない。



エスタブール軍 最前線要塞
その目前までやってきたクラウ達に、ある文書が送られていた。

「ローランドは軍を撤退し、捕虜を解放せよ。それらの望みが聞き届けられない場合は、一刻ごとにエスタブールの民の首を刎ねる。同じ文面のものを、ローランド軍に送りました」

ローランドの英雄王には民を見殺しにすることなどできない。その弱みにつけ込んだものであったが、それは考えの矛盾があったことも意味する。
それを知っていて何故戦を始めたのか。そういった不信感を感じるところであったが、サラウェルはこれは仕方の無いことだと言う。
今のこの状況でノアを守るためには、民を人質にするしかない。ノアを守るためと同時に、敗戦国となった場合のことを考えると民のためでもある。そのことは確かにわかるが、やはり先に述べたことが引っかかる。
そうでなくとも、ノアはこのようなことを望まない。

「民を人質にとることは、民を虐げることにはならないのか!」

ノアのその訴えに、サラウェルは答えない。答えられることがあるとしたら、この戦争がもう止められないということのみ。
ここでノアは気付くこととなる。

「そうか。私は担がれただけの傀儡の王。結局、誰も救えないのか……」

そんなところで、とある兵士が報告にやってくる。
クラウのところにも同じように報告が入る。その内容は、ローランドの兵がエスタブールの要塞を攻撃しているというもの。しかし、クラウの部隊の兵は揃っているのだという。それに、シオンはクラウに全てを任せたはず。シオンを信じているクラウは援軍が来ることは考えず、一つの結論に至る。


攻撃を受けたエスタブール側は、人質を殺して本気だという意思を伝えようとする。
しかし、ノアはそれを止めて人質を解放するように言う。

「私が手を尽くしてみます。私一人の命で」

そう言うノアだが、皆がそれなりに彼女を慕っているのは事実。彼女だけを死なせまいと、皆は自分も死ぬと名乗り出る。そこでどうぞどうぞと譲る者はいない。
しかし、ノアが慕われているのは、そういった民を大事にするからでもある。

「皆のその言葉だけで充分です」

ノアは皆を犠牲にはしない。
自分が犠牲になって、その分、民が少しでも幸せになれば彼女にとってもそれは幸せなのだろう。

「あなた方は生きて下さい。そして、エスタブールの民が少しでも幸せになれるように。そのために、私は……」
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「それは困りましたね」
とても感動的な場面だったのだが、そこに水を差す者が現れる。

「皆さまの国を想う心にはいたく感動してしまいました。しかし、私としては、ノア・エン皇子様のお命だけでは、この度の罪を償うには少々足りないかと。そう……エスタブールという国がなくなる悲劇の幕を飾るのは、やはり悲劇が相応しいとは思いませんか?」
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ミラン・フロワード。
彼はここで悲劇の最終幕を演じさせようとする。

「闇よ、有れ!」

ミランは影の獣を出し、次々と相手を倒していく。
その中で、サラウェルはノアを連れて奥の方へと逃げていく。

国も人も、全てを失った。
そのことにひどく落胆するノアであったが、サラウェルはまだ残ってると言う。

「あなたの命です」

サラウェルは語り始める。
「追い詰められたエスタブールは暴走し、あろうことか人質を殺し始める。その暴走の指揮を執るのが…姫様、あなたです」
そういう脚本。

「そして、その暴走した姫君を殺し、この戦いを終わらせたエスタブールの貴族サラウェル・セイルは、国を救った英雄としてローランドに迎えられる」
「我が軍の動きが筒抜けだったのも……人質をとろうと言いだしたのも、全てはあなたの……」
サラウェルの策略。

「最初はあなたを妻に迎え、この国を乗っ取るつもりでしたがね」

裏切られたノアは、せめてもの抵抗として短剣を手に取る。しかし、慣れぬ彼女の攻撃がサラウェルに通用するはずもなく、それをとられてしまう。

万事休す。
そう思われたところであったが、ミランが放つ影がサラウェルに襲いかかり、サラウェルは命を落とす。

「安心してください。そのような男が英雄になれるほど、ローランドは英雄に困っておりません」
「英雄だと? これがローランドの英雄王、シオン・アスタールのすることか!」

ミランは闇を担う存在。
これはシオンの意思ではないことを告げ、自分の策略だと言う。

綺麗事では世界は動かない。それを認めた上で、シオンは語る。

「ノア・エン皇子は人質を殺した挙句、自決。それが筋書きです」

それが真の策略で、それをシオンが許すだろうこともミランは確信していた。しかし、全てがうまくいくとも限らない。
ミランの仕業であると素早く悟っていたクラウがやってきて、ミランと対峙する。
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「やっぱりお前は、シオンには必要ねぇ!」

ミランにしてみれば、シオンの背負うものが見えていないクラウこそ仕える資格はないと考える。
ミランの考える筋書きのためには、ノアと人質を殺す必要がある。それをクラウが邪魔をするとなるならば、戦いは避けられない。
二人は自らの持つ力を発して戦おうとするが、クラウに守られる立場のノアは、エスタブールの民のためにもクラウを失うわけにはいかないと考える。それと同時に、ミランの力にも気付いていたからこそ、ノアは二人の戦いを止めさせる。
そして、自分が民や兵にローランドに従うよう説得すると申し出る。

「人質を殺してエスタブールの評判を落とすより、その方がよほど効果があると思いますが」

その通り。そしてノアには、それをできるだけの信頼がある。
そののちに、国を売った裏切り者だと罵られようと、自分が殺されるようなことがあろうとも、ノアは構わない。

「ですから、皆を殺すことだけは……」

利害一致。
ミランはノアの申し出を受け入れる。

「戦は終わりました。兵を退いてください。クロム少将」

とりあえずは一段落。

「あなたと……あなたの王を信じます」

クラウは腰が抜けたノアを立たせてやる。
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差しのべたその手が、エスタブールの民を救う時がくれば……



シオンはこの戦争が必要だと考えていた。だからミランの罪を咎めなかった。そして、救える命を少しでも増やしたかったために、クラウに指揮を任せた。自分への言い訳であっても、それは正しい判断であったであろう。

「シオン兄ちゃん泣くの?」
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天井裏からひょっこりと顔を出したイリスが問う。
イリスは泣いた顔を見たことがない。とことで期待するも、タイミングを逸したシオンは泣くことはない。
次の機会にと約束を持ちかけた後、イリスはライナたちの様子を報告する。
そこに描かれていたのは、犬がライナで天使がフェリスだという素敵な絵。

「野獣君と、勧善懲悪美少女天使フェリス姉様!」

そんな素敵な絵の中に、大事な絵も含まれていた。
穴を掘ったら短剣が出てきて、投げたら竜が出てきたことを現すそれ。

「まさか、勇者の遺物? 本当にあったのか」
信じてなかったのか。

そんなところで、ラッヘルから何やら報告が入る。
その情報が確かなのは間違いないであろうことから、シオンはイリスにライナ達のもとに戻るように頼む。
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「だんごだんごだんごだんごだんごぉぉぉぉぉぉ!!
だんごの箱の山に絶望したライナは、シオンに怒りをぶつける。

「あまり下品な言葉は禁止!」
伝わらなきゃダメだものね。


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