とある魔術の禁書目録II #15『女王艦隊』

上条さんと遭遇することになったアニェーゼは、とりあえず上条さんの頬と鳩尾に拳を入れ、彼をその場に跪かせる。

「どうしてあなたたちがアドリア海の女王に？」

倒れた上条さんはおいといて、アニェーゼとオルソラは会話する。
アニェーゼの言う“アドリア海の女王”とは艦隊名“女王艦隊”の旗艦のこと。この船はその護衛艦の一隻にすぎないという。アニェーゼが今ここでやっているのは侵入者捜索の手伝い。それで見つけたのが上条さんたちだったというわけ。

「これは少し利用できそうです」

上条さん達をここから逃がすのと引き換えに、アニェーゼはその報酬を得ようといていた。


現状説明。
そもそも、女王艦隊というのはアドリア海の監視のために作られた艦隊だとアニェーゼは言う。

上条さん達は文字通り監視に引っ掛かったのではないかという説もあるが、そういったことはこの船が存在する建前にすぎない。ここは一種の労働施設であり、アニェーゼのような罪人を集め、受けた損失分を支払わせるためのものだという。

アニェーゼの本題はここから。

「あなたたちを見逃す代わりとして、シスター・ルチアとシスター・アンジェレネ、この二人をここから助けろってなとこです」

以上の二人は一度脱獄をしたのだという。
準備を整えてからアニェーゼ達を助け出そうとしていたというが、それは叶わず。連れ戻され、脱獄術式の防止を施されているという。

「それは、思考力そのものを奪うということでございますか？ つまり、脳の構造を砕くと」

アニェーゼの深刻な表情を見る限り、オルソラの推測は正しいのだろう。
そうなる前に彼女達を助けなければならないし、それは上条さん達にとっても大いにメリットのあることとなる。脱獄術式が手に入るのだから。

その術式は既にローマ正教側にばれているはず。しかし、アニェーゼが言うには女王艦隊でこれから大仕事があるため、一人二人の脱獄は気にしていられないのだという。

「私は陽動のため、旗艦の方へ行っちまいますが…その間になんとかして下さい」

アニェーゼは上条さん達を助けるのではなく、あくまで利用するだけの意図で行動をしている。一緒に逃げるようなことはしない。

「管理する側が恐れているのは労働者の反乱なんです。言っちまえば、私はそれを防ぐ精神的な安全装置みてぇなもんなんです」

艦隊の中で自由に動く権限もあるし、労働も免除されている。ここは居心地がいい場所であり、ルチアとアンジェレネはただの空回りな存在にすぎないと。

「さっさと自分たちだけで逃げていればいいものを…」

多勢に無勢ともなれば、いくら上条さんであっても余裕はなくなる。無理に自分の考えを押し付ける必要もないのだから、アニェーゼの言うとおりに動くのが互いのためであり、賢明な判断であるだろう。
アニェーゼは上条さんに手を差し伸べる。上条さんはそれを右手で掴み……

アクシデーント！
上条さんの右手はアニェーゼの手を掴むと同時に、彼女の着る修道服にまで触れてしまっていた。そしてその修道服は魔術的な拘束効果を与えるための特殊な装飾。そこから導き出される結果は、ストン……というわけ。

アニェーゼが出そうとした悲鳴を、オルソラと上条さんでなんとか防ぐ……



残されたインデックスは、上条さん達が巻き込まれたものが女王艦隊であることを考慮し、一人で追うことは無駄だと判断する。
この地で今頼れる者と言えば……
インデックスはある場所へと向かう。



上条さんとオルソラは、ルチアとアンジェレネが捕えられているであろう部屋へと向かう。
その入り口前に立っていた氷の鎧が突如動き出し、近付いてくる上条さん達を襲う。その第一手をかわした上条さんは右手でその鎧に触れ、勝負あり。魔術が解除された鎧は、ただの氷としてその場に崩れる。

上条さん達はルチアとアンジェレネが捕えられている部屋へと入る。
そこにはもちろん敵がいるが……

「動くな！」

強い口調でそう命令したのは意外にもオルソラだった。
彼女は先ほど破壊した鎧の破片を床に落として見せつける。

「それ、どうやって壊したと思います？」

幻想殺し-イマジンブレイカー-。
上条さんのことを知っている者なら、誰もがそう答えただろう。しかし、相手は上条さんのその能力のことなど知らないはず。だからオルソラは強い口調で言う。

「警告を聞かないのでしたら、これを使うだけですけど」

オルソラは袖に手を差し込み、何かを取り出す仕草を見せる。あたかもそこに何らかの霊装があるかのように。
氷の鎧を破壊するほどの代物となれば、相手が手を出せないのも仕方のないこと。観念した相手達を縛り、ルチアとアンジェレネを救出することに成功する。


ルチアとアンジェレネを助けに来た上条さん達であるが、二人はそのことを知らない。簡単に信じようとはしない二人に、上条さん達はアニェーゼの名前を挙げて説明しようとする。
アンジェレネだけであればそれだけで納得させることができたであろうが、ルチアはまだ疑いを持つ。とは言え、何も起きなければ二人が助かることはなかったのだから、上条さん達の言い分を信じるのが妥当なところ。変に意固地にならず納得するあたり、ルチアは賢明さも備えているといったところだろう。

詳しい説明は後。今はとにかく脱出をというところで、ルチアとアンジェレネは手を合わせて脱出術式を発動させる。

「氷を使った造船術式の亜種で、空洞を空けられるのです」

これを応用し、海水を固めて海底コースターを作り脱出する。それを相手もそう簡単に許すわけはなく、二人の拘束衣服の迎撃術式が発動する。

上条さんは自分の右手を見つめて提案。

「だったら手っ取り早く俺の――」

彼の提案は最後まで発せられることなく妨害される。オルソラのひじ打ちによって。

「まあまあ。まさか彼女達まで素っ裸にするつもりでございましょうか？」

オルソラさん……。すごく…恐いです……！ｗ



旗艦へと向かうアニェーゼは、過去のことを思い出す。

路上生活をしていた頃にローマ正教に拾われ、その先でルチアやアンジェレネに出会った。多くの辛いことを経験した彼女であるが、ローマ正教で過ごした時間は決して無駄なものではなかっただろう。

ささやかなる幸せの時を思い出し、彼女は帰還へと向かう……



上条さんはアニェーゼが旗艦に向かったことをルチアたちに教える。それを聞いたルチアは驚き、アニェーゼの行動の持つ意味が決して単純なものではないことを上条さんたちに説明する。

“女王艦隊”は大規模魔術“アドリア海の女王”の儀式場を守るためのものであるという。わかっているのは、儀式は同名の旗艦でおこなわれ、発動キーとして“刻限のロザリオ”という別の術式が関わっているということ。

「そして、“刻限のロザリオ”に、シスター・アニェーゼが使われるってことです」

それが発動しようものなら、脳は破壊され心臓を動かすだけの存在になると……。それが、アニェーゼの言っていた“大仕事”。まさか言っていた本人が大いに関わる話であろうとは……


船に大きな爆発音と衝撃が響き、上条さんたちは今自分たちが置かれている状況を瞬時に把握することとなる。
砲撃は味方艦から撃たれていると。続いて考える暇もないまま、船はあっという間に破壊されていく……



“聖バルバラの神砲”。それが放たれる振動は、アニェーゼのもとにも伝わってきていた。

彼女は今、ビショップ・ビアージオと対峙している。
ビアージオのもとに37番艦は沈んだと報告が入るものの、彼は人目の処理は他人任せにする。さすが、今現在起きている戦争を俗事だと言って他人任せにするだけのことはある。……こっちの話だが。

さらに緊急の報告が入り、37番艦の下部に巨大構造物の反応があるとのことだった。

「潜水術式…」



上条さんは海底へと沈んでいく。

そこへ――――



「とうま！」

上条さんが目を覚ますと、そこにはインデックスが……さらには建宮斎字までがいた。

「どうぞ」
上条さんは五和からおしぼりを渡される。びしょ濡れの体をそれで拭かないとね＾＾

上条さん達の他、オルソラに限らず砲撃に巻き込まれた者たちは全員拾われたとのことで一安心のところ。潜水機能のついたこの木舟にて、これからどうするのかが話し合われることになる。そのためにはまず、上条さんから詳しい話を聞かねばならぬところ。ルチアやアンジェレネからの方が詳しい話が聞けると言う上条さんだが、その名を聞くや否やインデックスからは邪悪なオーラが迸る。

オルソラとともに、ルチアとアンジェレネがやってくる。
その修道服には、何故かインデックスと同じように安全ピンが取り付けられており……

「この二人の修道服はローマ正教が用意した拘束装飾でな」
「は？」
「そいつをぶっ壊すため、お前さんが気絶してる間に右手を使わせてもらったってわけ」

つまりは……
上条さんはおしぼりを持つ自分の右手を見つめる。その頃には、インデックスの怒りは最高潮に達しようとしていた。

「こ、これで怒られるのは……理不尽だぁぁぁぁぁぁー！！」

今回の彼の叫びには大いに納得。


アニェーゼのためにも説明しなければならない。
そのことに気付いたアンジェレネであったが、如何せんタイミングが悪かった。

インデックスに噛みつかれ騒ぐ上条さんはおしぼりを用意する五和に突っ込んでしまう。その際、上条さんは五和の上に被さってしまい……

五和にチャンス到来。その状況を温かく見守る者もいれば、後押しするべく耳たぶへのキスを注文する者もいる。どちらにしろ、誰もアンジェレネの話などは聞いていなかった。
我慢ならなかったアンジェレネは……

「ちゅうもーーーく！！」

ルチアの修道服を豪快にめくる。
いつもの癖。それならば仕方あるまい、うむ。


腹が減っては軍は出来ぬ。
とことで、まずは食事。

「どうぞ」
上条さんは五和からおしぼりを渡される。食事前は必須だものね＾＾

なかなか進展しないおしぼり作戦。これはこれで、五和の魅力。


「何で“アドリア海の女王”が、術式の名前になってんだ？」

昔、ヴェネツィアとローマ正教は相当に仲が悪かったという。ローマ正教が一撃でヴェネツィアを葬れるように整えたのが“アドリア海の女王”。
アニェーゼは恐らく何も知らない。ともかく、その魔術を発動するまでに彼女を救出しなければならないか。

ルチアとアンジェレネはそれが難問だとわかっていても、行かねばならないと考えている。
その考えにあまりいい色を示していない建宮に、上条さんは説教を始める。

「俺たちが議論すべきなのは、アニェーゼを助けたいか助けたくないかっていう、それだけなんじゃねぇのか？」
その通りだろう。

「あいつは自分が助かるチャンスをわざわざ棒に振って、仲間を逃がそうとした…。このままじゃ、あいつの思いは誰かに利用されたまま、破壊されちまう。要はあいつを助けりゃあいいんだろ！？ ヴェネツィアの破壊だって、それで全部防げるんだろ！？ だったら、やることは一つじゃねぇか！」
上条さんは立ち上がる。

「お前はあいつを助けたくないのかよ！ だったら俺は一人でもあそこに行くぞ！」

上条さんの説教はそこまで。
相手は（イギリス清教所属）天草式十字凄教、その教皇代理ということを忘れてはいけない。

「覚悟があるかどうか、聞きたかっただけなのよな」

彼らが女教皇様-プリエステス-から得た教えは……

「救われぬ者に救いの手を！！」

彼らが動くことは、上条さんが動くことと同等に当然なこと。



女王艦隊へと向かう。
まずは多数の無人艦隊での特攻で相手を混乱させ、その隙に上下艦の潜水機能を使って水中から接近……というのは囮。

上条さんたちは29番艦に乗りこむことに成功する。

大事なのは各艦の制圧ではない。相手の核を潰すこと。
旗艦“アドリア海の女王”に向けて、上条さんたちは急ぐ。

その前に立ちはだかるのは、かつてアニェーゼの部隊にいた者たち。
そんな者たちもろともこの船を沈めるべく、周りの船は砲撃を開始する。

「きたれ！ 12使徒のひとつ、徴税吏にして魔術師を撃ち滅ぼす卑賤なるしもべよ！」

アンジェレネはその魔術でマストを折り、砲撃を防ぐ。
しかし、それによって発生した破片が甲板へと降り注いでしまう。

「きたれ！ 12使徒のひとつ――」

アンジェレネはシスター達を守るため連続して金貨袋を操ろうとするが、先の攻撃で耐えかねていたのか、袋が破れて使い物にならなくなってしまう。

それでもアンジェレネの意識は変わらない。
シスターを守るべく、氷の破片から彼女達を庇う。

降り注いだ大きな破片は、アンジェレネの小さな体を吹っ飛ばす。

「シスター・アンジェレネー！！」

なんてこったですよ……

「とある魔術の禁書目録Ⅱ」O.S.T 1
ジェネオン・ユニバーサル
2011-01-26
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Comments

[林檎を剥いて歩こう]

オルソラ、原作よりも良いキャラになっていたと思います。肘打ちのところは詩菜さんみたいな演出か背後に煉獄があれば良かったかも知れません。


まさかビアージオのcvが若槻さんだとは!!感激です。セルやビクトリームなど敵役をやらせたら凄いですかね!!

[林檎を剥いて歩こう]

スミマセン！
若槻さんではなく若本さんでした。

[本隆侍照久]

＞林檎を剥いて歩こうさん

言われて思い出しましたが、オルソラは詩菜さんに通ずる部分があるかもしれませんね。どちらも頬に手を当てて微笑む姿が浮かびます。オルソラはあまりそんなイメージはなかったんですけどねｗ 今回で印象が変わりましたよ。確かにいいキャラをしていますｗ

ビアージオが若本さんなのはどうでしょうか。一見合ってるので素晴らしいですが、今後のことを考えると……ｗ
どちらにしろ、若本さんが登場というのは実に素晴らしいことですね！ 今後のキャラにどのような方の声があてられるかも楽しみですね＾＾