理由は分かっている。雪名以外にありえないだろう。
その雪名からメールが届いていた。
ディスプレイが完成したとのことで、その画像を添付、一度来て下さいとのこと。
しかし行ける訳なかろう。今は彼のことで頭がいっぱいなのだから。
先日。
雪名にキスされた木佐はすぐに店を出ていってしまった。
もちろん、キスの理由は聞いていない。
いつものパターンならなだれ込むはずだったのだが、雪名の前ではそれができなかった。
でもそれで良かったのだと、木佐は自分に言い聞かせる。
雪名も本気ではなかったはずなのだから、悩むだけ無駄だと。
そんな考えを巡らせてるところで、高野から企画書の提出を求められる。
それを思い出した木佐は慌てて企画書を作成することに。
高野はこういうミスをしない。それは、彼なりに普通にやっているためだという。
ふむぅ(´・ω・`)
高野の本に重版がかかり、木佐は彼との違いを実感する。
自分の本も面白いと感じる木佐だが、やはり世間で売れなければ意味がない。もし自分が担当でなければこの本はもっと売れていたかも……と、ネガティブモード突入。
そんなんじゃダメ。
まずは企画書を作成せねば。
企画書がなんとか完成し、ファイルを閉じる。
変更を保存するか訊かれ……
“いいえ”
あちゃー(´・ω・`)
夜。
木佐は気付いたらブックスまりもの前に来ていた。
まあ一応フェアしてもらっているのだから、一度はチェックしないと……と自分に言い聞かせ、木佐は店に入っていく。
雪名に会わないようにと注意する木佐。今日はいないのだろうと安心した矢先、
「あ。木佐さんだ」
いました(´・ω・`)
早速彼の案内でディスプレイを見に行くが……
ここだけキラキラで空気が違う。しかも、一時間ごとに動作する仕掛けまでついている。
なんて無駄にすごいんだ(´・ω・`)
しかしそれを木佐が気にする必要はない。
「俺の好きな本作ってる人のためだから、張り切っちゃっただけです」
(*´・ω・`*)
帰ろうとする木佐だが、あと少しでバイトが終わるという雪名は、この後少し時間をとってくれないかと言う。
「この間のこと……ちょっと話したくて」
あのカフェで待っててと言い、名刺を渡す。
彼は何を話そうとしているのか。木佐はそんなことを考えつつ店の外でぼーっとしていると、過去の男が再び近づいてくる。
この男とはその時限りの関係。顔が好きだっただけだと言う木佐に対し、男は今の木佐が狙っているであろう相手について言及する。
本気で好きになることはないと木佐が言ってしまった以上、雪名に言って来てやろうとする男の行動は止められないか。
しかし、雪名のことは違う。……というところで、その雪名がやってくる。
「何か勘違いしてるみたいなんで一応。俺、木佐さんと超ラブラブなんすよ」
(*´・ω・`*)
雪名がこの男に言いたいことは単純。
「木佐さんに近寄んなって言ってんだよ」
(*´・ω・`*)
カフェは定休日だったとことで、雪名の家(一人暮らし)に向かうことに。
そこには木佐の担当作品が全部揃っていた。偶然か……いや、必然だろう。
木佐は先ほどのお礼を言う。嘘までつかせちゃって申し訳ないと言いつつ、どこら辺から聞いたのかさりげなく。
しかし、そんなさりげなさはそもそも意味がない。
雪名は知っていたのだから。
「木佐さんが、俺目当てで書店通いつめてたって」
雪名目当ての客は多い。だからこそ、彼は木佐からも同様の空気を感じ取ったのだろう。
居たたまれなくなった木佐は、雪名のキスについて全然気にしてないと嘘をつくが、
「何で気にしてないんですか!?」
雪名は怒る。
だって、彼はとても気にしていたのだから。
キスの後さっさと帰るし、書店にも来ないし、メールの返事もないし……
「キスして嫌になったんですか?」
いや、そんな……
雪名は毎日ずっと見られていて気になっていた。しかも自分の好きな本を作っている人だから、運命とかを感じてしまう。
そう……
「俺……木佐さんが好きなんですけど」
真っ直ぐ見つめてくる彼の視線はとても魅力的。
「俺と、付き合ってくれませんか?」
付き合いたい。
突き合いたい。
しかし、木佐は無理だと言う。
それは、彼が好きだという想いがわからないからであるが……
その意味を知るためにも、二人は付き合うべきなのではないかと思う。
雪名が一歩踏み込んだら木佐は一歩逃げてしまっている。
『多分……俺は……お前に、嫌われたくないから』
本気の恋だからこそ、木佐は臆病になってしまう。
木佐は雪名の顔が好きだと言っているものの、さっきから雪名の顔を見ていない。なのに真っ赤になって緊張している。
「それは顔だけじゃなくて、俺を見てるから。ですよね?」
うむ(´・ω・`)
自分の感情がわからないのであれば、キスをすればいい。
雪名が本気にさせればいいだけの話なのだ。
「木佐さん。好き」
雪名がその想いを抱くように、木佐だってきっと……
翌日。
木佐の本に重版がかかったことが告げられる。
しかも、面白いし長く売れるという高野のお墨付き。
作家に知らせるのはもちろんのこと、雪名にもそれを知らせる。
素早い返信にちょっぴり嬉しげな表情を浮かべる木佐が可愛らしい。
そして、分割して送られてきたメールにはこう記されてあった。
『好きです。』
素敵な演出。
それに、木佐はようやく実感する。
『多分、きっとこれは……初恋なんだ』
素敵(*^ω^*)
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