東日本予選まではあと三日だ。
太一たちが部室に向かうと、そこでは既に千早と机くんが試合を始めていた。
机くんが1枚を取る。いつもであればそのことに対して千早の首が振れてしまうのだが、今回は微動だにせず目が札から離れていなかった。
千早は新がやっていた水のようなかるたをイメージすることで頭がいっぱい。それを体に降ろすにはどうしたらいいか模索する……
試合が終わり、全員が揃ったところで改めてローテーションに則った試合をおこなう。
読手をする太一は、最近の千早の様子が変わったことに関して新の存在を意識してしまう。今までがその考えの繰り返しであったため頭を振り、自分も変わるのだと改めて決意する。
太一読手として試合が進む。
ふっと息をついたところで机くん達は読手太一がしているすごいことに気付く。
とことで、太一は札を見ずに暗唱しての読手を務めていた。
100首をバラバラに被らずに読んだと言うそれはとんでもない業。しかし、肉まんくんはそのことを長所であり短所でもあると指摘する。
太一の頭の中は文字ばかりなのだ。それも大事なことではあるのだが、競技線の中の札をイメージとしてもっと感じなければならないのだ。
「かるたは頭と体両方いるんだよ!」
ついこの前それを実感していただけに、肉まんくんの言葉は重くのしかかる……
下校。
その際、女帝が千早に声をかけてくれる。赤点なしの報告とともに……
「クイーンの予選、がんばるのよー!」
先生……(´;ω;`)
机くんにも感謝して、千早は改めて実感する。
『あたし……かるたが好きだ…!』
うむ(´・ω・`)
予選当日。
大江はこの日のために新作の袴を用意して来ていたのだが、この大会は暑さとの戦いとことで、原田先生からNO THANK YOUのサインが出る。
一般の大会ではエアコンが入ったりもするが、今大会は窓も開けないし換気扇さえ動かないという。理由は簡単。
「音が大事だから」
ただでさえ最初に袴で苦戦したのだ。無理に着させるわけにはいくまい。
肉まんくんら翠北かるた会所属の者たちがやってくる。
そこの会長と仲悪い様子の原田先生。どんな因縁があるのか気になるところだ(´・ω・`)
一回戦前。
千早は集中していい感じであった……のだが、
「あー。クイーン20枚差で負けた人がいる」
S藤登場(´・ω・`)
高校選手権で準優勝した彼は、それにより推薦で有名大学に入れるという話を千早にし、彼女の脳内に余計な情報を入れてやる。
そんな須藤の頭の中はSばかり(´・ω・`)
それに対抗すべく、千早は須藤には勝ったと言う。それでイラッとした須藤は今日先に敗退した方は坊主になるよう言い、千早も勢いでそれに乗ってしまう。
うっかりきっかけで千早はテンションダウンで大会に臨むことに……。
しかし、開会挨拶にて、西日本予選も行われていることを知らされ集中を取り戻す。
対戦票が示される。
それによると、肉まんくんの初戦の相手は須藤。
千早の髪を守るためにも頑張らねば……というプレッシャー(´・ω・`)
千早の相手は立川梨理華。
肉まんくん曰くやりにくい相手というその子は、クイーンと同じ小4でA級になった子。現在は小6のスピードスターだと。
試合前の挨拶笑顔で千早もズキューンとしてしまう。周りの視線を見ても、皆がこの天才梨理華に注目していることがよくわかる。
無名の千早とは期待のされ方が違うのだ……
『期待しておりますがな!!』
さすが原田先生(´・ω・`)
坪口とともに一回戦不戦勝とのことで、二人は千早の試合を観に来る。
坪口はそこで、原田先生が前に千早に速く取るのはやめろといったことに関して言及。それを言うのは早かったのではないかと指摘する。
千早の武器が伸びているところだっただけに、確かにそうかもしれない。この試合でその影響がどう出るかわかるか……
序盤。
立川梨理華は軽い飛び出しでペースを掴む。
それは子供ならではのものであって、彼女特有の長所としては耳がいいこと。二つを合わせれば千早よりも速い……か。
対する千早は競技線からやや下がり目からスタート。読手さんと呼吸が合って気持ち良く1枚をゲットする。
“速く”じゃなく“ちょうどよく”。地味でありながらも、千早は確実に進んでいた。
立川は、取っているのに遅いことをぼそっと指摘。プレースタイルが似ているだけに、千早としてもその気持ちがよくわかるのだろう。
それだけでなく、ちやほやされる子供の気持ちも理解して……
立川がお手付きをする。
狙っていた札は明らかに“おおえ”であることが窺えたため、千早はそれを送って攻めることに。立川が狙っていない札も取りこぼさないことを決意し、ちょうどよく取ることを狙う。
それは先日戦った金井から学んだこと。そして、原田先生の教えから学んだこと。
流れは立川に向いていなかった。丁寧にいけば大丈夫という後半戦に突入したところ、気付けば肉まんくんもこの試合を観戦していた。
つまり……ね(´・ω・`)
試合を観戦していた原田先生は、考えた挙句千早に合図を送ることに。
は や く と っ て い い よ。
GOサインまで受け、千早は以前のように前に出る。
とことで、千早はここから驚異的なスピードを見せ始める。
同じプレースタイルだからこそ、周りの視線が千早に向けられ始めたことに焦ったのだろう。立川は自分のペースを乱し、お手付きをしてしまう。
そうなったらば子供のメンタル。自分の思うようにいかないことに、感情が振れ始めて涙をこらえる段階に入ってしまう。
それでも耳が長所であるのは変わらない。そこからかるたが好きだという思いが伝わってきて、とても好感が持てるものだ。
立川はまだまだこれから先がある。かるたを通して、かるた自体もそうだが自分をもっと好きになってくれれば……母親が望むのはそんな単純なこと。
試合終了。
無難な枚数差で千早は初戦を突破する。
立川だけでなく千早も涙を溜める。それだけいい試合だったと言えよう。
ギャラリーが落ち着いたところで、原田先生は話し始める。
「僕はね…。千早ちゃんにたくさんの武器をあげたいんだ」
感じの良さだけでなく、流れの読みや呼吸や正確さを。
かるたで一番大事なのは才能。そのレベルの差を埋めるためにも、武器は一つだけではいけないのだ。クイーンに対抗するためにも……!
試合後。
千早は立川からラッキーマークを貰う。がんばってという激励の言葉も受けて……
立川は大人の勝手な話を聞いてしまう。
そのちょっとした会話を聞いたら、子供の可能性を潰しかねないというのに。そんな奴らに向けて、
「チョコレートォォォォォ!!」
千早は甘いけど甘くない叫びを発する。
これで立川は普通にママンのもとへ行けるさね。
立川も千早のように、きっと最初は誰かに言ってもらったのだ。
『綾瀬さんは……かるたの才能、あると思うわ』
その言葉は宝物。
これまでもこれからもずっとそうだから……
『簡単に――触れないで――』
太一は千早が一回戦突破したことを新に伝えようとしていた。
そこに新もがんばれという言葉を付随しようとするもやめて……メールを送信する。
二年前に名人戦に挑戦したこともある村尾さんが負けたことを聞き、新は驚く。
相手が特別強いはずはなかったため、新は直接村尾さんのところに行く。
新は子供の頃から村尾さんを慕ってきた。その彼が、名人にはなれないことを既に悟っていた。
憧れの人が戦意喪失している様を見るのはさぞ辛いことだろう。でもそんな新のもとにメールが届いてきて……
『千早一回戦突破。
おれも必ず東日本代表を目指すから
新は西日本代表になれ。』
かつては名人になど頓着がなかった太一が、今は本気で名人を目指している。
新もここで立ち止まっているわけにはいかないのだ(`・ω・´)
この記事へのコメント
あるるかん
突然強いとか最初から無敵とかじゃなくて、じっくりじっくり欠点を克服してく感じが王道ですね。成長が見て取れて違和感が無いから凄い。
一人で克服してる訳でも無く、色々なキャラ同士が刺激しあって高めあってるというか、昔の千早に似た子に今の千早が何かを伝えるって感じがしてよかったです。
対戦者の母親が太一の母親みたいな人間ではなくて良かったです(笑)。
本隆侍照久
みんな学ぶべきものが出てきたり課題が出てきたり。その中を一歩一歩確実に歩んでいるといった感じですよね。だからこそ一戦一戦が劇的に見えて目が離せませんよ(`・ω・´)
昨日の敵は今日の友とでも言うべきか、切磋琢磨しているのもまたいいところですね。学ぶべきことが多いのが本来ですが、今回はまた相手に学ばせるという意味合いも強くて新鮮でしたね。ちょっと前のことですが、千早たちが幼き頃のことを思い出させてくれて感慨深くもありました(´・ω・`)
対戦者のママンは普通に子を思う良いママンでしたね。我が子にプレッシャーをかけさせるタイプではないので、これからもあの子にはのびのびと育ってもらいたいです(´・ω・`)