そんな中、反政府勢力による暴動が起きているというニュースが伝えられる。
犠牲者も出ているとのことで皆の間に緊張が走る。自分たちの世界とは隔たりの感じられるニュースだが、クドにとっては確実に身近で起こっていることなのだ。
遠い空の下。
クドの目の前には、テヴアの悲しい惨状が広がっていた。
ここにいては危険。クドは祖父がいる場所へと連れて行ってもらう。
お爺様と久しぶりの再会。
二人で抱き合って喜ぶのはわずか。クドはママンがどうなったのかを訊く。
お爺様によると、まだ望みはあるのだという。乗組員は直前に異変を察知してロケットを降りたという情報もあるとか。今はその可能性に賭けるしかないか。
夜。
クドが眠ろうとしていると、そこに一台の車が近づいてくる音が聞こえてくる。
緊張……。が、その者は味方である合図を示して、お爺様に情報を伝える。
それによると、ママンの無事が確認されたとのことだった。
クドがいると聞いて今会いに向かっているのだという。お爺様はその迎えに出ようというのだが、外は反勢力でいっぱいなためクドはここで待つことに。
全てはいい方向に向かっているはず。しかし、クドは黙って逃げだしたという過去の行為が気がかりとなり、ママンはきっと軽蔑しているだろうと考える。
そのため、また逃げ出そうとするが……
もうこれ以上逃げ出してはいけない。そう考えを改める。
そんなところで大きな爆発音。クドの潜むここが攻撃を受けたようだった。
間もなく反勢力がやってきて、クドに銃口を突きつける……
間違っていたのではないか。
テヴアが想像以上に危険であることを知ったため、クドを帰したことを後悔する理樹。
でも後悔したってどうしようもない。
クドは必ず戻ってくると約束したのだから。
でもその際唱えたおまじないの意味はというと、毛もなく羽もなく……羽根をむしられて身一つで地獄へいけ。ということのようだった。
幸福を願うのであれば逆を願う。それがロシア風。
それだけの覚悟をしてクドはテヴアに帰ったのだった。
「能美さんは、戻ってきますよ」
美魚が語り始める。
野球をしている時のクドの笑顔が好き。
彼女はリトルバスターズを通して世界に溶けこんでいた。
誰が欠けてもあの光景…あの世界は存在しない。
だから、クドは必ず戻ってくると、美魚は信じて疑わなかった。
今はその思いが大切。皆は空を見上げる……
クドは暗い牢獄に囚われていた。
片手を鎖で繋がれ、扱いは相当に酷いもの。
暗い中で、一人ぼっち……
夜。
鈴が理樹の部屋を訪れる。
不安で眠れない彼女は、初めて大事な存在を任せてくれたクドのことが心配でしかたなかった。
戻ってくるよなと、その答えを知らない理樹に問いかけなければどうしようもないくらいに。
諦めたらダメだ。
誰の役にも立っていないと思うからこそ、クドは役に立たなければならないと思う。
それに何より、また野球がしたい。一緒に笑いたい。
そしていつか、ママンと一緒に宇宙へ行きたい……。
その純粋な願望を達成するため、クドはこの暗いところから出ていく決心をする。もう辛いことから逃げたりしない……と。
たとえば世界が巨大な時計だとしたら。
それはどれだけ無数の名もない歯車でできているだろうと理樹は考える。
けど、どんなに小さい歯車でも、小さな積み重ねで少しずつ世界を変えていけるはず。
クドは理樹らにとってもう大切な歯車。
だからみんなクドが帰ってくることを願い、心の内でそれぞれエールを送る。
それがクドに通じたか。普通では起こりえない出来事が発生する。
理樹が持っていた、クドにとって大切なママンのロケットの部品。それが今は、クドの手元にあった。
クドはそれを使って手錠を破壊。拘束から逃れる。
これからどこへ向かえばいいのかわからない。
だけど確実に歩を進め、前へと向かう。
そしてその先――
クドは外の景色を再び拝むこととなる。
テヴアの混乱に終止符が打たれた。
リトルバスターズはいつものように野球の練習をする。
「平和な日常の裏側には、脆さが潜んでいる。過酷な事件も、決して遠い無関係の世界だけの出来事じゃないんだよな」
悲惨なことが起きても、それを変える力はないのかもしれない。
でも一人一人が歯車で繋がっていれば、わずかな一歩でも前へ進んでいけるのだ。
それはそれとして、メールによるとクドはそろそろ日本に着いているくらいだという。
ママンが思っていたさまざまなことを知ったクドは、ようやっとここへと帰ってくる。
服装をマイナーチェンジし、クドはストライクボックス(?)
「おかえり!」
笑って泣いてるクドを、皆も同様の表情で迎える。
謙吾も優しい微笑みで見守ってくれる……
彼らの日常が戻ってくる。
良かった良かった⊂(・8・)⊃
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