ゼウベルトはリズムが悪いことを感じていた。そんなゼウベルトに、カルロスは感じたことを正直に伝える。
それは試合を楽しめていないということ。そしてその理由は、カルロスがボールを持つと必ず、ゼウベルトへのパスコースに7番か10番、つまり椿かジーノが必ずいるからであった。
カルロスに言われて初めて気付いた事実。
「今日、一本のパスもゼウベルトに通せてないんだよ」
名古屋がいい攻撃ができるのは、カルロスからゼウベルトにパスが通った時。そこからリズムが生まれている。ゼウベルト自身は前にパスを通せていたが、後ろのカルロスから見ればリズムは良くなかった。
とことで、これからカルロスはゼウベルトの近く、つまりは前目でプレーすることに。
名古屋の外人3選手はどの選手も脅威。
その中でも一番注意すべきは、攻守の要であるカルロス。達海はそう考えていた。
前目でプレーするようになったカルロス。
そして、残り20分となったところで、カルロスは一気に前へと上がる。
シュートレンジに入ったところでシュートを撃つ……と思いきや、ペペにパス。
マズイ……そう思われたが、カルロスが後半必ず上がってくることは達海も読んでいた。
ハーフタイムで選手たちにカルロスが上がってくるであろうことを告げ、そして抑えるべきポイントも伝えてあった。
それは、頼みの綱であるペペ。
それを知らされていたとことで、ペペへのパスは清川がカット。そしてカウンターへと転じる。
ジーノにボールが入り、そこから右の赤崎へ。
赤崎はスピードで勝負して中へ切り込んでいき、シュート。決定的なチャンスだったが、ここはキーパーにブロックされてしまう。
しかし、まだこぼれ球がある。それを世良が競りにいったが惜しくも届かず。
駄目だったか……そう思ってしまうところだったが、さらにこぼれたそのボールに勢いよく食らいついていく選手がいた。
そして次の瞬間、ボールはゴールネットを揺らした。
決めたのは背番号7。
椿大介。
サポーターの歓声が爆発する。
そして、選手たちも椿を祝福する。
リトリート&カウンター。
それが型にはまり、先制することに成功。
椿自身としても、報われた瞬間だった。努力が必ずしも実るわけではないが、ジャイアントキリングを信じて努力し続けてきたからこそ、この試合において輝きを見せることができた。それは最初の大きな一歩。
カルロスは攻守の要。そのカルロスが攻め上がって守備に隙ができたところを突く。単純だが、名古屋の本質を見抜いていなければできない作戦。名古屋を研究しつくした達海の手腕もたいしたもので、それが実った1点だったか。
しかし、試合はまだ終わっていない。
残り時間は約15分。試合はまだまだわからない。
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