伝説の勇者の伝説 #004『ライナ・レポート』

エリス家 庭園

「なんだ。生きていたのか」

英雄シオンはそこでフェリスと会う。
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シオンがここへ来たのはエリス家に呼ばれたため。

「僕が呼んだんだよ」

そう言うのはフェリスの兄・ルシル。
ルシルがシオンを呼んだのは、シオンの気持ちを訊くため。いくつか質問をすることで、シオンが相応しいかどうかを判断するのだという。ただし、シオンがこの質問を受けるにあたっては条件があるという。

「もし、君の答えが気に入らなければ、君を殺す」

殺すのに痛みはないとは言え、その前提条件をシオンに話した上で質問をしようとするとはなんということか。

しかし、ここはエリス家である。代々王にのみ仕える家の主が自分を試したい。それがどういったことを意味するのかを理解したシオンは、ルシルの質問に答えることに。

「くだらないな。せっかく戦場で拾った命を、ここで落とすつもりか?」
「せっかく拾った命だからこそだ」
そういうものなのだろう。


ローランド 城下町
町民の間を、公爵様を乗せた馬車が駆ける。


ローランド 高等収監所
「ここに入ったら、まず二度とお天道様は拝めないからな。次に外へ出る時は恐らく……」
そんな場所にに収監されているライナは、監視のおっちゃんに紙と鉛筆、あと王立軍事特殊学院にある本30冊ほどを要求する。



何日か経ち、ライナは牢獄内に巣を作った蜘蛛を発見する。
ハエすら寄りつかないこの牢獄。とことで、心やさしいライナは食事をおすそ分けする。

約30冊ほどある本が届けられたところで、ライナはもう10冊ほどの本を要求する。
本を読むこと。それがこの牢獄でできるライナの数少ないことであるのだから。

看守によると、ライナは変わり者だという。
たいていの者はこの暗い嫌な雰囲気にやられて、神経がおかしくなる。どんなに騒がしい奴でも一週間経てば無口になり、一か月経てばたいてい……
それでも、ライナはここで本を読み続ける生活を続けていた。王立特殊学院の次はアスルード記念図書館の本を届けてもらう。看守ともすっかり仲良くなり、その娘さんの話で盛り上がるほどになっていた。
娘が一人で立って歩き出したことに感動する看守は目頭をおさえる。

「あっという間に大きくなっていくなぁ。子供ってのは……」
「歩き出したぐらいで何言ってんだよ。そんなんじゃ、いずれ大人になって、嫁にいくなんてことになった日には」
「許さんぞそんなことは! あ、お前まさか、俺の娘を狙ってんのか! そうなのか!?」
いくつの子を狙ってるってんだw

ライナはただ再認識しただけ。看守の娘さんが大きくなった時、戦争に行くなんてことになったらやっぱり嫌だなと。

「やっぱり戦争は嫌だよな」



とある寒い日。
看守の食事はいつもよりも豪勢なものだった。それは、共稼ぎをしている嫁さんの商売が調子いいためであるという。

本当は嫁さんに働かせたくはないと言う看守だが、軍人よりはよっぽどマシとのこと。
7年前。大きな戦争があった頃、看守も軍人であった。戦場へ駆り出され、仲間も皆死んでしまったという。

「ほとほと思ったよ。戦争は嫌だってな」

だから看守はここで働くようになった。
生活は大変だとしても、そのことに後悔をしていない。幸せな生活を送れているのだから。




本を読んで、書き記し、そして寝る生活を繰り返していたある日。牢獄にある者が近づく。

「なるほどね。――これがお前の選んだ道か。 こんなところでいつまでも昼寝できると思ったら、大間違いだぞ」



そしてさらに牢獄生活の日々を重ねる。
相変わらず物好きな蜘蛛が居座るその牢獄。ライナのそこでの生活も随分経った今では、本が溜まりに溜まって整理をせねばならぬという状況になっていた。
そんなところでやってきた看守のおっさん。その表情は浮かないものだった。

「さては……また奥さんと喧嘩したか? それとも娘に彼氏でも紹介されて落ち込んでんのか?」
「バカ言うな! うちの娘はまだ3歳だぞ!」

そんな話ではない。
看守ははっきりとは言わず牢獄を開ける。それだけでライナは悟る。

「あれだろ? 処刑が決まったんだろ、俺の」

約2年。ライナはここで生かしてもらったことに感謝しつつ、最後にここで書いた研究レポートだけ持ち出しを許してもらおうとする。しかし、それすらも許してもらえない。
無力な看守のおっちゃんは悲しみつつ、ライナを連れ出す。

「じゃあ……元気でな」

ライナは牢獄の蜘蛛に別れを言い、この場を後にする。



「ライナどこ行くのー?」
外に出たライナに、看守の娘さんが無邪気に声をかける。

「ライナばいば~い!」
かわいく手を振る娘さん。元気に育ってもらいたいものだ。



ライナが看守に案内された先。

「そいつがライナ・リュートか」

そこではフェリスが待っていた。
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とことで、ここから先はフェリスの案内で進むことになる。

「なあ美人さん」
「なんだ色情狂」

ライナの呼びかけに返事をするフェリスは、ライナのことを色情狂と呼ぶ。その判断材料は顔。それに経歴も。
そんなことはともかくとして。

「悪いけど俺……ここで逃げさせてもらうわ」

それはライナが昔約束したことにもよる。
まだ死ぬわけにはいかないとことで、ライナはフェリスと戦うこととなる。

「求めるは雷鳴……稲光!」

しかし、その攻撃はフェリスに返されることになる。
続けて攻撃してくるフェリスに対し、

「我、契約文を捧げ、大地に眠る悪意の精獣を宿す」

ライナはそれで脚力をアップさせ、フェリスの攻撃から逃れる。しかし、それでも逃れきれないのがフェリスの攻撃。どんな魔法を使っているのか確かめるべく、ライナはアルファ・スティグマを発動する。
しかし、フェリスは魔法など使っていなかった。

「求めるは水雲……崩雨!」

その攻撃すらフェリスの華麗な体術でかわされ、万事休す。

「お前。今手加減したな」
フェリスがそう言うのにも根拠がある。

「今の魔法。水でなく広範囲へ攻撃できる炎の魔法を使っていれば、私を捕えられる可能性もあったはずだ」
それはごもっとも。しかし、ライナにはそうしなかった理由がある。

「いやぁ…そうしたらお前、死んじゃうかもしれないじゃないか。せっかくの綺麗な顔を、火傷させるのも悪いしさ」
それを聞いたフェリスは剣を鞘におさめる。
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「なるほどな。私の、世界が崩壊するほどの美人っぷりに、色情狂のお前としては、戦闘中に良からぬ妄想ばかりが頭を巡って、適正な判断が下せなかったと。そういうことだな?」
そういうこと^^

そんな冗談はともかくとして、フェリスはライナを連れて王の待つ場所へと向かう。

「あのなぁ。わざわざ処刑されに行く奴がどこにいるんだよ」
「来ないなら来ないでいい。ただ、お前はひどく後悔することになるだろう」
なんだかよくわからぬフェリスの言葉。とことで、ライナはフェリスについていくことにする。



ローランド 城下町
久しぶりに見た城下町。そこは活気に溢れ賑わっていた。

そして、ライナは王を見て驚くこととなる。
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「ようこそライナ。我が宮廷へ。よっ!」

ローランド帝国国王シオン・アスタール。
彼を目にしたライナは、王の御前であるにも関わらずそこで昼寝を始めてしまう。

「で、どうだった、彼は?」
シオンはフェリスに問う。

「思った通りの色情狂だ。このまま放置すれば、数年の内に恐るべき犯罪を犯すことになるだろうな」
それはごもっとも。だけど別の事実もある。

「兄様以外の人間に手加減されたのは初めてだ」
それはいいことなのかな。

ライナは不貞腐れて昼寝をする。
「いい加減にしろよライナ。キファのこと、教えてやらないぞ」
「別にいいよ」
「彼女、死んだよ」
それを聞いたライナは驚き、飛び起きる。
それに対して、シオンはとってもとっても素敵な笑顔で言う。

「嘘だよ」
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嘘かよw

事実は、ライナのことをシオンに頼んで国から出たのだという。
それを伝えることも大事だが、ここからが本当に大事な話。シオンは分厚い紙の束を取り出す。

「俺のレポート!?」
「昼寝王国を作るためには。ふざけたタイトルだけど、中身はなかなか面白い」
伝説の勇者の遺物。その桁外れの威力を抑止力として使うことで世界中の戦争をなくす。そういった概要のレポートを、シオンは気に入ったと言う。

「というわけでライナ。お前は今から世界各地を巡り、その勇者の遺物とやらをかき集めてきてほしい」
「はあ!? 何で俺が!?」
発案者だからです。

ライナの補佐としてフェリスも共に行くとことで話がまとまろうとする。
「世界の平和のために、一つ頼むよ」

しかし、ライナは当然乗り気じゃない。勝手に話が進むことに反論しようとするも、
「俺の命令を聞かなきゃ……死刑だ」
素敵な笑顔^^

「どこが平和だよ」
それもごもっとも。

ライナだけでなく、フェリスも勝手に話が進むことに異議を唱える。フェリスは兄から命じられて手伝っているだけなのだから。
しかし、その点についてもルシルから承諾をもらっている。

「彼曰く、フェリスが言うことを聞かなければ、即座にウィニットだんご店が取り潰し……になるそうだ」
フェリスに衝撃が走る。

「あと2分以内に旅立て」

どこからか聞こえてきたその声は本気のもの。それを悟ったフェリスは、ライナの首に剣を突き立て、三つの選択肢を提示する。

「その一・首が飛ぶ。その二・胴が飛ぶ。その三・私の言うことを聞く。どれだ?」
結局は選びきれなかったライナを問答無用で連れていくことで無事解決。

「では行こう、相棒」
「誰が相棒だ!」
無事解決^^

ライナとフェリス、二人が去った後、シオンは自分が向かう場所についてルシルに問う。
ライナのレポートも未来の一つ。シオンの終着点は王になることではないとことで、ルシルはまだシオンを殺さないのだという。
シオンはシオンの、ライナはライナの道を進む。それがたとえ別の道だとしても……




『人が死ぬのは嫌いだ。殺すのも嫌い。泣かれるのだって、泣くのだって嫌だ。

人生を選べないというのは、どういう気持ちだろう? 家族が死ぬのは? 好きな人が死ぬのはどうだろう? 誰もそんなことを望まねぇはずなのに、何故か世界は、そんな無意味な悲しみばかりを笑いながら欲しがる。

何かを無理矢理変えたいと思ったことはなかった。けど、変えなきゃ悲しいし、もう何も失いたくないから。

めんどくせぇ話だが、そろそろ前へ進もうかと思う。今までずっと目をそらしてきたけど、必要なら自分の過去だって見つめてみよう。そして……もう誰もが、何も失わない世界を手に入れるために。

あの子も、キファも泣かないし、タイルやトニー、ファルは死なないし、シオンは思いつめなくていいような世界。

みんなが笑って、昼寝だけしていればいいような……世界へ』


ライナは彼自身の道を目指し、旅立つ――――


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