伝説の勇者の伝説 #010『夕暮れ』前半

「おい。お前何者だ?」

剣をその場に突き刺したフェリスは、狂ったライナに問いかける。
その問いに、ライナの中のアルファ・スティグマは答える。

「神、悪魔、邪神、勇者、化け物。好きに呼べ。どうせお前は……消える」

とことで放たれた圧倒的な力により、まずはフェリスの剣が消えうせる。
その攻撃をかわしたフェリスは言う。

「あのスィとやらは驚いていたようだが、お前がただのアルファ・スティグマ保持者じゃないということは、驚くに値しない。お前はもっとタチの悪い、伝説の変態男だからな。おまけに色情狂の上、怠け者のできそこないの間抜けだ」

ライナは辺りを破壊しながらその言葉を黙って聞く。

「お前には言っていなかったが、お前の書いたレポートを、私はシオンに見せられて読んだのだ」
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それにはこう書いてあった。
『人が死ぬのは嫌い。殺すのも嫌い。泣かれるのも泣くのも嫌い。人生を選べないというのはどういう気持ちだろう? 家族が死ぬのは? 好きな人が死ぬのはどうだろう?』

それを読んで、フェリスが最初に思ったこと。
『これを書いた奴はバカだと、私は思った』

人は死ぬもの。
そして、誰かが生きるということは誰かが死ぬということなのだから。

『その全てをめんどくさいと思うような怠け者で、おまけに小心者のお前が……そんなお前が、私を殺すことなんてできるはずがないと……私は思っている』

激しい攻撃の余波を受けながらも、フェリスはライナの前に立ちはだかる。

「おいライナ。お前は前に進もうと思ったのだろう? 化け物と呼ばれるのが嫌だと思ったのだろう? 人を殺すのはもう嫌だと、そう思ったのだろう?」
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フェリスは、これまでライナと過ごした時間が長かったわけではない。しかし、その短い時間の中でライナのことを理解し、フェリスなりにライナのことを信頼しているのであろう。
だから、ライナを信じ覚悟をした上で、フェリスはライナの願いの力を試す。

「私はもう、お前の攻撃を五度よけたぞ。だが次はよけない。あとはお前が決めろ」

フェリスはライナを化け物だと思っていない。
「お前は私の相方で、下僕で、茶飲み友達だ。化け物なんかじゃないんだ」

それを、対峙する者の心の奥に眠るライナに語りかけ、そして呼びかける。

「聞こえているのかライナァァァァァ!!」

フェリスの全力の叫び。
その声は、確かにライナに届いていた。

「テメェの出番は…もう終わりだ……!」

ライナは暴走する自分の力に抗う。
それでも消えない五方星を、フェリスが無理矢理抑え込む。
片手を組み合う形となったライナとフェリス。そこでライナは、自分の目を閉じるようフェリスに頼む。
それを実行しようとしたフェリスだが、ライナが最後の抵抗。ライナの左手がフェリスの首を絞める。
それでもなお、フェリスはライナが化け物ではないと言う。

「化け物なんかじゃないんだァ!」
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そしてフェリスの目からは涙が流れる。
妹にも見られたことのないその姿を、今この場で見せたフェリス。
そんな彼女の想いが通じ、ライナの目からも涙が流れる。そして、フェリスはその目を閉じさせる。


ライナの暴走が止まったところで、雨が降り出す。

「俺はやっぱり、お前を殺そうとしたな。これが俺の姿なんだ。誰にも忌み嫌われ、殺すだけしか脳のない化け物……。でももう俺は、知ってる奴を殺したくないんだ。だから、お前はローランドに帰れよ。シオンだって文句は言わないさ。この旅はもう終わりに――」
「お前が本気で私を殺すつもりなら、殺せたはずさ」
フェリスは言う。

「だが私は死んでいない。女一人殺せないような小心者のお前が、化け物だと? 笑わせるな」
フェリスの優しさは胸に染み入る。

「よく…戻った」
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「ぁぁ………………ただいま」
本当に素敵なコンビだ。


後半へ続く……


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鏡 貴也

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