伝説の勇者の伝説 #011『悪魔の子』前半

ルーナ帝国 辺境
周りに破壊されて困るものがないその場所を見張るライナとフェリス。
そこへ、ルーナの魔法騎士団が現れ、アルアも連れてこられる。
それを目撃したライナは何を思うか……




ローランド 城下町
そこでは、今朝出された勅令の報告がされていた。
国王派の貴族が大出世しただけに限らず、市民も労力さえあれば役職に取りたてるとことで、市民は大いに盛り上がる。


王宮 執務室
「何で俺が元帥なんだよ!」
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クラウは少将から元帥に大出世したことに対し、シオンに不満をぶつけていた。

「元帥じゃ不満なのか? しかし、その上には名誉元帥ぐらいしか…」

そういう話ではない。
シオンの施しで出世をしたところでクラウたちは嬉しいとは思わないし、身内とも言える国王派を出世させることは、反国王派にとって挑発されたも同然。思慮にかけることだと思われても仕方のないところだろう。

「参ったな。出世したのに文句を言ってくるなんて、みんな欲がないんだな」

それはそうだろう。
シオンの傍にいる者たちは皆、立身出世などのためでなく、この国を思っているシオンの心に触れ、その力になりたいと願っている素敵な人たちばかりなのだから。

「ではヌーブル卿。今回の勅令が、国を想う私の心の表れだとしたら、受け入れてもらえるのだな?」

そう言われては何も言い返せないだろう。
陛下はいじわるなお人だ。

「皆は、ガスタークという国を知っているだろうか?」

シオンは今回の勅命に関する説明として、ガスタークの話を持ちだす。

「詳しくは知らないが……大陸の北の端にある小国だろ?」

クラウのその言葉に、ノアとカルネも頷く。
つまり、ガスタークの認識はこの程度のものが一般的で、特に言及すべきこともないとことなのだろう。

「では、ストオルという国は、知っているな?」
「それはもちろん。このメノリス大陸でも有数の大国ですから」

シオンの訊き方からしてもそうだが、一般的にはガスタークよりもストオルの方が有名であることは明らか。それが皆の認識である。
ローランドと比較してみてもそれは明らかで、ストオルの国力と軍事力はローランドの5倍だという。そんなストオルの話。

「私のもとに入った情報によれば、領土の3分の2をガスタークに占領されてしまったそうだ」

その事実がどれほど驚くべきものか、すぐにわかるだろう。
クラウやノアもその事実に驚くが、驚くべきは占領された側のストオルのことではない。それを占領したガスタークの方。

「小国だけなら、もういくつ飲み込まれたか。はっきり言って見当もつかない。何せ遠いからな」

ガスタークはローランドからかけ離れた国。ローランド自体の脅威になるとは限らないというのが自然な考え。

「しかし、ガスタークを脅威に思う国々は、国力を…軍事力を高めようと、こぞって争いを始めるだろう。違うか?」
違わない。
それもまた自然な考えだろう。

「もう時間がない」
それがシオンの判断であった。

「国内で醜い争いを続けている時間は、もうないのだ。 そこで、フロワードから提案があった」

とことで、いつからこのタイミングを待っていたか、ミランが入室してくる。

「反抗する貴族たちを罠にかけ、一気に粛清してしまおうという提案だ」
「粛清だと!」

クラウが驚くのもごもっとも。
それがフロワードの提案とあらばなおさらだろう。

「シオン! それじゃあ前のあのクソみてぇな王と変わらねぇだろ!」
「いや、クラウ。フロワードの提案は間違ってはいない」

根本から否定するのではなく、あくまで全体を見通してシオンはそう判断する。
しかし、ミランが提案したものも一つの方法だと考慮した上で、やはりシオンはこの国の民を皆守りたいと思っていた。

「たとえ私を殺したいと考えている貴族であろうとも、ローランドの民に変わりはない。ならば……私が守るべき者だと思う! 私は、少しでもその命を救いたい。この国を、誰も殺さずに統一したい!
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根底のその願いは覆さない。
だからこそ、今回のような強引な策を講じた。

「もしも貴族たちが私の軍門に下るなら、それを受け入れよう」
来る者拒まず。
それが最も理想的な形。

「しかしあくまで反発するなら……」
粛清はやむを得ない。

「もう一度言う。時間がないのだ。この国を滅ぼすわけにはいかない。私とともに、この国を救ってはくれないだろうか?」

それが王の判断とあらば。

「全ては、我が王の命のままに」
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皆、シオンの判断に従う。


「貴族どもに甘い汁を吸わせ、油断したところを一気に粛清する……」

ミランは、最終的には自分の策が選ばれると考えていた。
しかし、そう単純なものでもない。

「少しでも多くの民を助けたい……ですか。やはり王はこうでなくては」

シオンが選んだ道は、必ずしも正しいとは限らない。それはミランが指し示したものより多くの血が流れるかもしれない。そして、そのことに思い悩んでしまうこともあるだろう。
しかしだからこそ、ミランがいる意味がある。

「ならばその悩みを、私が少しでも軽くして差し上げなければ」
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それが闇を担う者の役割。

「全ては、我が陛下の命のままに」
ミランは不気味な笑みを浮かべる……




『忌破り』追撃隊官舎
ミルク、ルーク、リーレ、ラッハ、ムーの5人は、渋い顔をしたラッヘル・ミラーの前に立つ。

「はぁ……。やっぱ任務失敗を怒ってるのかなぁ……?」

ミルクの言う任務失敗とは、竜が現れた時のこと。
しかしリーレは、今回のことは仕方ないと言う。確かに相手のライナが強かったために仕方ないと考えるのは自然かもしれないが、忌破り部隊としてそう言ってしまうのはどうなのだろうか。
それではこの任務から外されても文句は言えないと思うのだが……

「あの強さは無茶苦茶ですって。赤い竜まで出しちゃうんですから」
それはライナの力ではないけどね^^;

「ああ。あれは怖かったねぇ。今頃どうなってるのかな?」
「意外と、観光名所になってるかもしれませんよ」
「赤い竜まんじゅうとかのお土産とか、できてたりして」
「えー。あまり食べたくないかもぉ」
楽観的だこと。

「でも私たち、これで任務を外されちゃったら、どうしよう」

そう言うミルクだが、それが自然の成り行きであるし、ルークはそれでいいと思っていた。

「実際問題、今回の忌破りは、私たちの手に負える相手ではありませんし」
「ヤーダー! ライナは絶対私が助けるの! 助けるったら助けるの!」

上司の前だというのに元気なものだ。まあそれが彼女の長所なのだろうが。

「で実際問題、この忌破りは君たちの手に負えないわけだな?」
「いいえ! こんな任務楽勝です!」
なんと勝手なことを。

ルークは任務から外してもらう方がいいと考えるが、前の時は本気を出していなかったと言うミルクに圧され、嘘か本当かわからないが彼女の真の実力を認める。
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どや顔やめいw

「なるほど。ルークがそこまで言うなら、大丈夫なんだろうな」

ルークに対するラッヘルの信頼は厚い。
とことで、今後もこの任務はミルクたちに任されることになり、忌破り部隊一行は元気良く今日の買い出しへと向かう。

「私たちの手に負える相手ではない……か」
残ったルークに、ラッヘルが語りかける。

「ライナ・リュートという男、思った以上にいろいろと厄介でして」

それはそれとして、ルークはシオンが始めようとしていることに言及する。
「腐った貴族たちを追いださなきゃ、もうこの国はもたないでしょう。粛清でも何でもすればいいんです」

前にも増して貴族が嫌いになったというルーク。
それは、ミルクがカラード家でされていた仕打ちによる。
孤児院から引き取られた彼女は、過酷な訓練を課せられていたという。

「ミルク隊長はこれまできっと、当たり前の幸せすら、味わったこともなかったんでしょう」
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『本当に大切なものは失ってからその価値に気付く』
普通の生活という当たり前の幸福。大切なその前提すらない生活がどのようなものであったのか、想像に難いだろう。

「今、ミルク・カラードはこの国にいてはならない」

彼女を想っているからこそ、これから始まる騒動にミルクを巻き込まないようにと、ラッヘルとルークは考える。
そんなことを知らないミルクは、純粋にライナに想いを馳せる。

『ライナ。どこにいたって必ず、私が助けに行くからね』
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ライナとフェリスは、アルアたちの様子を陰から窺っていた。

魔法騎士団を従え、アルアのアルファ・スティグマを暴走させようとするチェゾ・カルティ。
彼らによりアルアが痛めつけられる光景を目にし、ライナも平静を保つのが限界のようだった。しかし、相手は魔法騎士団とあって、無闇に出ていくわけにもいかないか。

アルア自身をどんなに傷つけても暴走しないと判断したチェゾは、アルアの前に彼の母親の死体を出す。
年端もいかない子供にとって、それは過酷なもの。泣き出してしまうアルアを目にし、ライナの精神を怒りの感情が支配する……
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後半へ続く……


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