伝説の勇者の伝説 #019『行方知れずの恩知らず』後半

ローランド帝国 医療施設
カルネはクラウに資料を渡す。

「ライナ・リュートに関する報告書です。正直まだ信じられませんよ。シオンさんがアルファ・スティグマ保持者を飼ってたなんて」
酷い言い様だ。


報告書にはライナの詳細が書かれてあった。

ライナ・リュート。本名、正確な年齢、生まれなどは全て不明。
推定年齢5歳の時に拾われた盗賊の村でアルファ・スティグマであることが発覚、軍に保護される。
ジェルメ・クレイスロール訓練施設にて戦闘訓練を受け、その後ローランド三〇七特殊施設へ送られる。
死と隣り合わせの訓練を受けて、ローランド軍の秘密組織に入れられた。ついた通り名は“ローランド最強の魔術師”。
まともに任務をこなそうとしなかったため、監視の意味も込めて王立特殊学院に放り込まれた。
そこでシオンに会ったというわけ。


彼の境遇に似た者を、クラウは何人か見たことがあるという。

「あまりにヒドイ目に遭い続けた果てに、感情の全てを殺すことで、何もかも諦めようとする……。どうせ何も変わらない、変えられない。何もかもめんどくさい。どうでもいい」

ライナはまさしくそれ。
彼だって普通の人と変わらないというのに……

難しい話かもしれないが、自分たちが信じているシオンが信じるライナを信じてほしいところである。……いろんな意味で複雑なところか。




ティーアとライナは、仲間がいる仮の宿へと到着する。
そこから現れたのは数人の子供。アルアだってそうだったように、子供の魔眼保持者は当たり前にいる。

「人間たちに追われて行き場をなくし、そして、命を狙われた」
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かつて。
ティーアたちはとある者に襲われたことがあった。
イーノ・ドウーエでも喰うことのできない來獣を相手にし、大苦戦を強いられたティーア。

「その時は、38人……殺された」

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望んで手に入れたものではないのに一方的に化物と呼ばれ殺される者と、それを余裕の笑みを浮かべて殺す者。

「いったい、どっちが化物だ」

ガスタークと名乗っていたその者たちに怒りを感じるティーア。それはもっともな感情だろう。

ティーアの周りに子供たちが群がる。

「僕はこの子たちを守りたい。この子たちが、笑っていられる世界を作りたい。だから、君のような仲間が増えるのは、本当に嬉しいよ」
ティーアは心からそう思っている。



夕方。
ライナの周りにも子供が群がり、何が得意なのか質問をぶつける。

「昼寝かな」
「こいつ使えねー」
どこへ行ってもライナの扱われ方は不変ですw

「昼寝はいいですよね」

そう言いやってきたのは、ラフラという美少年。
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彼の力のお陰で、ティーアはエスタブールの宿屋でライナに会うことができたという。

「僕の瞳は、夢置眼(エプラ・クリプト)。他人の夢を自分の夢に置き換える。簡単にいえば、人の夢に同調して、その中身を知ることができる能力です」
それでライナの夢を見たというわけか。

「醜い化物が、どんな叶わぬ夢を見ていた」

ラフラの言うそれは、ライナが見ていた夢のもの。その力は確かなようだ。

ラフラは随分前からライナを見つけていたと言う。しかし、それをティーア達に教えてはいなかった。

「あなたは、特別だから」

ラフラはライナの夢を見て、その圧倒的な負の感情を感じ取っていた。
怒り、悲しみ、憎しみ、絶望。
蔑まれ、怖れられ、どんどん孤独になっていく。
傷つけるのが、傷つけられるのが怖い。いっそ死ねれば、壊れてしまえば……
そんな感情に苛まれながらも、ライナは最後に必ず、人が好きだという叫びが心を支配した。
自分が化物かもしれないとわかっていながらも、大好きな人と触れ合っていたいと考えていた。

「あなたは悲しいくらいに、優しくて、弱くて…、寂しがり屋で……」

それはライナのことであると同時に、ラフラ自身のことでもある。

「だから、あなたを呼んだんです。助けてほしいと思ったから……」

ラフラは願う。
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「ティーアを……ここにいる子供たちも……中央大陸に集まっている仲間たちも……。そしてライナさん、あなた自身も……。 人間に絶望した、悲しい神の眼の保持者たちを……あなたに、救ってほしい。ぼくにはできないことだから……」

彼はそれを“夢”に見ている……



夜。

「たくさん食べてね、ラフラ」

美少女プエカはラフラにサービス♡

プエカがラフラを好きであることを、子供たちはからかう。
美少年ラフラと美少女プエカ。素敵な組み合わせじゃないの^^
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そんな素敵な光景に、ライナも笑みをこぼす。
近くの陰にリルが潜んでいるとも知らずに……




夜中。
皆が眠る中、ライナは考える。

『ライナ。僕らは人間なんて下等な生き物ではない。神の眼を持った上位種なんだ』
ティーアが言っていたことを思い出し、本当にそうなのかと疑問を抱く。

『俺らは本当に人間とは違う化物なのか? 本当に人間とは相容れないのか? 同じじゃないか……何も変わらないじゃないか……』

ここに来て、今まで以上にその疑念を抱くようになったライナ。
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自分は救われる価値がないと考えているものの、それが魔眼保持者であるという理由ならばここにいる子供たちも救われる価値のない人間になってしまう。
しかし、そんなことはない。ライナの考えは変わり始めていた。

そこで、ふとライナは外に不穏な気配を感じる。

「出てこいよ」

草むらに向けてそう声をかけると、そこからある者が姿を現す。

「やはり、かつてローランド最強の魔術師と呼ばれた方は違いますね」

出てきたのはリルではない。

「忌破り追撃部隊、カラード小隊副隊長、ルーク・スタッカート軍曹です。シオン・アスタール陛下の命令により、ライナ・リュート……あなたを処分します」

また避けられぬ戦いが起こってしまうか……


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