神のみぞ知るセカイ 10話

FLAG. 10.0『あたしの中の……』

「ありがろん……」

とんだ失敗。たった五文字ですらちゃんと言えない栞は、“ありがろん”を忘却の地平線に流すため、すぐにでもこの場を後にしようとする。

「しかし本ってもんは…もうなくなってもいいな」

桂馬のその言葉を聞き、栞の足が止まる。
本をデータに移してしまえばいいと言う桂馬に、栞は何てこと言うのかと心の中で反論。表紙、装丁、中表紙、奥付、紙の香り、厚み、手触り。それらが“本”という世界を素敵に構成している。ディスプレイで見る文字などナンセンスと感じるところだろう。
しかし、価値観は人それぞれでもある。一概にそれを間違ったことだと言えないため、栞は溜息をつきながらも仕方がないと諦める。そもそも知らない人と論争などできないのだからと……

「全部スキャンしちゃえば、本なんか捨ててしまえるよ」

しかし、栞の限界はついにやってきた。
彼女は桂馬に向かって勇気を振り絞り……

「ば…ばかぁ………………!」
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ついに言った。
それを言ってから、自分は何を言っているのかと思ったことだろう。それでも、栞は言いたいことを言えたはず。
その場を後にする……


二人の様子を観察していたエルシィは、桂馬の言動を反省させようとする。
桂馬はコンテンツにしか興味がないものの、わざわざ喧嘩を吹きかけなくても良かっただろうに。

「だがおかげで、モノローグが聞けた」

心の声。リアルでそれを聞くのは至難の業だろう。
モノローグを見えるようにするため、桂馬は好感度を下がるのを恐れず行動を起こしたというわけか。

ちなみに、エルシィは消防車のご本を読んでご満悦。

『今回もこいつは頼りにならなさそうだな……』
以上、桂馬のモノローグでした。


お礼を言った相手にバカはなかったなと反省する栞。

『トホホのホ……』

ましてやありがとうは失敗しているのだから、その口ではっきりとバカだと言えたことに、自分の口は無能だと感じていた。

栞は昔からテンポの遅い人間で有名だった。
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頭の中ではフル回転しているものの、それをうまく口に出すことができない。本を読んだかと訊かれた時も、それを24回も読んでいたのに大好きであることを伝えられなかった。だから感想を原稿用紙100枚に書いて持って行ったものの、気味悪がられてしまった。

人とのコミュニケーションは非常に難しい。やがて彼女は、自分の居場所をリアルから本の世界へと移すことにした。

『本は私を急かさない。安心する』

そこでは、彼女は自由だった。あまねく言葉を知り、自在に操る万能の人間としてそこに君臨した。

ビスマルク曰く。
歴史から学ぶは賢者。経験から学ぶは愚者なり。

『私は……本の世界に生きるのよ!』

そんな心の声までも、桂馬にはお見通しだった……



翌日 放課後
図書委員精鋭会議が開かれる。
そこでの話題は、図書館に視聴覚ブースが誕生するということ。CDやDVDも借りられることになるとことで、皆の評判は概ね良好なものだった。

「アイマス! デドアラ!」
ひたすらデドアラを入れることを求める若木。
「若木。それゲームだから」

そんな中、書記の栞は立ち上がる。何か言いたいことがあるのだろうが、それを伝えることができないまま会議は終了してしまう。


栞に何故駆け魂が巣食ったのか。それを考えてみると、彼女は本当は話したいと思っているのではないかという疑いが浮上するが……

「そんな月並な図書委員は却下だ」
「……神様は、何様ですか?」
エルシィの問いかけはごもっともw


栞は本に落書きをしている者を発見。すぐさまその本を取り上げてから、その相手が桂馬であることに気付く。

『図書館の本は、みんなの公共物だよ!? なのに落書きするなんてなんという人なの!? 死ぬればいいのに!』

しかし、桂馬曰く落書きではなく訂正なのだという。
「本とは情報だ。正確でない情報なんて無意味だろ」

それはごもっともだけど栞の考えは違った。
桂馬のような人であれば推理小説の本でも犯人をばらしてしまうだろうから。

「訂正もすぐできないなんて…、本はやっぱり、前時代的だな」

その言葉に、栞はまたも我慢の限界を超える。

「あほぉぉぉ~…………!」
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そして栞は去っていく。

桂馬が女の子を怒らせるのにも慣れてきたと言うエルシィだが、桂馬にしてみれば怒らせてるのではなく話しているのだという。

「物言わぬ 文系少女の女心 肝臓診るが ごとくなり!!」

外側に変化は表れずとも、裏で大きな変化があるかもしれない。桂馬はその手ごたえを感じていた。
とにかく今は、イベントのコンボを繋げて流れを保つことに徹するのみ。



さらに次の日
桂馬がまた落書きをしているのを発見した栞は、今度こそ強気に言おうと心に決める。が……

「それ……僕の本。図書館の本じゃないよ」

攻撃的に出た時に限ってとんでもない失敗。すいませんと謝るべきか、こんな人にはそう言うべきでないか、栞の心は揺れる。

『すいません』
「あなたは落書き禁止。出入り禁止。いえ、全部禁止」
桂馬はペンを回す。

『私は静かに過ごしたいのに』
「あなたがいると乱れちゃう」
『すいません』
「視聴覚ブースなんてできたら、あなたみたいな人ばっかり来て、私の図書館が――」
栞ははたと気づく。

「思ってることと話してることが逆になってる」

モノローグが露わに……



さらにさらに次の日
桂馬はまたも図書館へと来ていた。
そんな彼を傍から見て、栞は思っていることを言葉に発していた。まことに怒りのパワーというのは恐ろしきものだ。

「しかしここは、いいところだな」

それは桂馬の心からの言葉であっただろう。
誰にも邪魔されずに生きたい。桂馬と栞の考えが合致した瞬間――

「図書館は、素敵な場所だよ」

現実の喧騒から守ってくれる紙の砦。
そこで二人は初めて対等な関係として向き合う。

「僕、桂木桂馬だ」
「し……、汐宮栞……ですが……」
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非常に大きな一歩を踏み出せたことだろう。
彼女は反射だと心の中で言い訳をするが、桂馬と何か通じたことを実感する。


人嫌い。視聴覚ブース。本が好き。心の声。
それらのキーワードから、桂馬は栞の心のスキマを見つけようとする。そんな中で、栞があるプリントを破る光景を目撃。それを羽衣で復元し確認する。

「エンディングが……見えたぞ」

そしてエンディングへ……w


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