伝説の勇者の伝説 #024『遠い日の約束』後半

「……ぁ、あれ? どうして、俺……?」

ライナに起こされ、シオンは目を覚ます。

「俺に仕事手伝わせといて、先に力尽きるってのはどういうことだよ」
「ライナ……」

そこは執務室。
部屋を見回しても誰もおらず、以前と変わらぬ様子だった。

「俺、寝てたのか? どれぐらい?」
「四時間」

彼にしては長すぎるくらいだろう。
先ほどまで見ていた壮絶なことは全て夢だったのかと、シオンはまさかの夢オチを示唆する。
どんな夢だったのかライナに話そうとするも、今の今まで覚えていたそれを忘れてしまう。
夢ならよくあること。やはり所詮はその程度のものだったということか。

「いやさぁ、寝言でお前が、『ウヒヒヒ……熟女のブラジャーに囲まれて、俺はなんて幸せなんだー』とか言ってたから、正直起こすかどうか迷ったんだけどさー」
「ヤバ。俺の趣味がばれたか」
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いやいやw

目覚めたシオンは仕事を再開しようとするが、彼にはもうやるべきことは残っていない。

「まさかお前……一人であれ全部?」
「ああ」
「嘘だろ? 何で俺を起こさないで、一人」
「うっせーな。起こしても起きなかったんだから、仕方ないだろ」

シオンに背を向けるライナのなんとかわいいことか。

「ありがとな」

シオンはライナに礼を言い、仕事続行へ。もちろん不眠のライナと一緒に^^

「俺はまだ寝てねぇんだよ!」

そんなライナをシオンは笑って誤魔化す。そんな平和な光景。

『ああ、そうだ。違うんだこれは。わかってる。もう時間なんだ。前へ進まなくちゃならないんだ。だから俺は――――』




――――雨中。

シオンは気を失ったライナの首筋にナイフを突きつける。
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「殺せ。殺すんだ。ここで殺さなければ、ライナは死ぬことすらできなくなる。永遠に地獄を、彷徨い続けることになる……! だから、俺は、お前を、闇から救って……!」

しかし、シオンは勝つことはできなかった。
ナイフを落とし、天を仰ぐ。

「お前の勝ちだ! 俺にはこいつを殺せない!」
『誰も……誰も勝ってないさ。お前は俺だ』
そう。

「俺は……俺たちは、ひどく弱い」
『ああ。だが前に進む』
「友達を裏切って……俺たちは、友達を生贄に捧げて、地獄に落として、前へ進む!?」

それにシオンは耐えられない。それでいて、ライナを殺すことも救うこともできない。

『お前はよくやったよ』
ライナもそう言っていた。しかし、シオンは自分を責める。

「お前に何がわかる! お前にいったい何がわかるんだ!」

シオンはやはり自分を責める。
そして、自分の心をもう一人の自分に委ねる。

「大丈夫だ。俺は……俺は前に進むよ」

シオンは倒れたライナを振り返り、別れの言葉を告げる――――




ライナが起きるとそこは牢屋の中だった。
自分を殺さなかったことを後悔させてやると、前向きな表情でライナは陣を描く。

「我・契約文を捧げってあはぁぁぁ!!」

振り向いたら天井がぶっ壊されていた。
そして、驚きのその状況を作り出してそこに立っていたのはフェリスだった。
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「お前はいったい何をしている!?」

それはライナのセリフでもある。しかし、フェリス相手だと問答無用で痛めつけられるのが関の山だろう。と思っていたが、そうでもなかった。
フェリスはライナの胸に可愛らしく飛び込んでくる。

「死んだと思った……」
「え?」
「死んだと思った! 本当に……お前が死んだと聞かされて、私は……、探したんだ。ずっと……シオンが……、言っても信じないで、ずっと…ずっと……」

言葉にならないほどに泣きじゃくりながら、ライナの無事を喜ぶフェリス。
彼女はシオンに会い、その異常を感じていた。シオンはライナを殺したと言って泣きそうな顔で笑っていたという。

「あいつはネルファ皇国に進軍した」

禁忌の術で生みだした兵士を率い、ネルファの民を皆殺しにしているという。それは間違っているものの、民は英雄王を信じてやまない。
今の彼は英雄王ではないというのに……


いたるところで不要な戦いが起こってしまっている。シオンを止めるため、何でこんなことになっているのか真実を解き明かすために、ライナはその方法を捜すべくローランドの追手から逃げていた。

橋を渡りきったところでそれが破壊される。
振りかえると、そこにはキファが立っており、彼女が追手を引きつけていた。

「無事に逃げてね、ライナ」
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その隙に、ライナはフェリスとともにこの国を出る……


なあシオン。俺は、お前にずっと感謝してたんだ。
俺はずっともう死んでたんだ。生きてるけど死んでた。自分は化物だから、誰かの傍にいることはできないし、誰かを愛したりすることもできないし、生きる意味なんてないって、全部諦めてたんだ。けどさ…俺はお前に救われたんだよ。心底救われた。いっつもそれを感謝しててさ……そうは見えなかったかもしれないけど。



「求めるは焼原>>>・紅蓮!」

ミルクをはじめ、忌破り追撃部隊が倒した相手。それは桃色がかった髪の者だった。

「まさか……」
そのまさかだろう。

一山越えた先で、巨大なキノコ雲が発生する。


俺は、それを返したいと思ってる。
だから、今お前が何に巻き込まれてんのか知らないけど、俺はお前のところまで行くよ。お前を救うために……


そのために、どれほどの力がいるのかはわからないけど、必要なものは全部手に入れて、お前のところに行く。だからそれまで、お前は覚悟して待ってろ。あの時、俺を殺せなかったことをお前に後悔させてやるから。
一人で勝手に絶望して、何もかも背負いこんで、泣きそうになってるお前のところに行って俺は……俺はお前に…お前に……、最高の親友を持ったって言わせてやるからさ。


だから俺も前に進むよ、シオン。
必ずお前を救う。お前を諦めてなんかやらない。



「行くぞ、相棒」

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「……ああ!」

ライナとフェリスの冒険はまだまだ続く。




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