STAR DRIVER 輝きのタクト 22話『神話前夜』前半

少女が歌う。その歌声は実に綺麗だ……

その近くで、少年マルクは謎の女性に出会う。その身なり、その髪の色はこの辺りで見かけない姿。もしかしたら夜になると大海原で暴れるというイカ大王の化身だろうかとマルクは予想する。
マルクのその予想を華麗にスルーし、女性は遥か遠いところからマルクに会いに来たのだと言う。

「ねえマルク。君は今恋をしてるだろ?」

虚を衝かれたというわけではないだろうが、マルクは驚きの表情を見せる。

「彼女はクレイス」
「彼女を知っているのですか? そして、見えるのですか?」
そう、この女性には見える。だからこそマルクに話したいことがあってここに来たのだった。

「もちろん彼女と……そして……この船の物語を」


陽の光に輝く長い髪を持つクレイスは美しい少女だった。同時に、数奇な運命のもとに生まれた少女でもあった。何しろクレイスの姿は普通の人には見えず、触れることもできないのだから。
そんな絶望的な境遇で育ってきた彼女であったが、孤独ではなかった。何故なら、一人の青年コルムナとめぐり会ったのだから。

「あなたには、ここにいる私の姿が見えるのですか?」
「おかしなことを言う。君はそこにいる。だから僕には君が見える」

コルムナがかけているメガネの度は合っている。だから、クレイスの姿が見えるのは彼にとって当然のことだと思えただろう。
しかし、クレイスは違う。自分を見ることのできるコルムナに、特別な命のオーラを感じる。

「どうか教えて下さい。あなたの名前を」
「僕はコルムナ。青年コルムナ」
大事なことなので二度言いました。

「私はクレイス。一人ぼっちのクレイス」

彼女の姿を見ることができた男性はコルムナが初めて。
「なら僕は、世界で一番幸せな男だ。だって、こんなにも可愛い君の笑顔が、僕だけのものなんだから」

くさいセリフ。
しかし、それもよく似あうのがコルムナという青年か。
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「僕が見つけた…。今日からクレイスは、僕だけのものだ……」

コルムナはクレイスに迫る……が、彼がクレイスに触れることはなかった。
彼女の体は蜃気楼のようなもの。見ることができるのが既に奇跡。だから触れ合うことはできない。

「今日のことは忘れて下さい。もうあなたの前には、二度と現れませんから!」
「クレイス!」

コルムナは走り去ろうとするクレイスを呼び止める。

「たとえ触れ合うことができなくても……僕はもう、こうして君の笑顔に出会ってしまった。それなのに、その笑顔をもう二度と見ることができないなんて……そんな悲しいことは言わないで」
コルムナはクレイスに再び近づく。

「これから迎える朝と夜には、君の笑顔を見ていたい。それは許されないことなのかな?」

それはクレイスにとって嬉しい言葉。自然と涙が流れてしまうほどに嬉しすぎる言葉。

「もう、コルムナ……。あなたの言葉こそ、私を世界で一番幸せな女の子にする…。神様感謝します。きっと私は……」
クレイスはコルムナに向き直る。

「今日、この日のために生まれてきたのですね!」
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二人を照らし出す光が、二人の仲を祝福する……


「スガタく~ん!」

観客の方々はスガタに黄色い歓声。そう、これは演劇なのだ。



暗転。

「こんにちは」

コルムナにセクスィーな女性が話しかけてくる。
その彼女が身に付けた大きな宝石に、コルムナは興味を持つ。

「幸せそうだね、コルムナさん」

コルムナはまだ名乗っていない。彼女がその名を知っているのは、街の酒場がコルムナの噂で持ちっきりだからだという。

「あいつはいもしない夢の中の女と、一緒に暮らしてるって」

それに対しコルムナは、街の連中は見えないだけだと…、言わせておけばいいと言う。
酔っぱらった時につい余計なことを口走ってしまったのが事の発端。コルムナはそれを後悔する。

「さっきあんたの家を通りかかった時、挨拶させてもらった。清楚なセーラー服に、栗色の瞳。流れるような長い髪は、さらに眩しく輝いていた」
「こいつは驚いた。クレイスの服装のことは、誰にも話してないのに……」
つまりはこの女性にもクレイスのことが見えたということ。

「あんたは、命のオーラの輝きを持っているのか?」
否。

「魔法の目だよ」
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それはすなわち、この女性が魔女であるということ。
コルムナは懐からナイフを取り出す。

「おやお兄さん。物騒な物持ってるじゃないか」
「男は、誰でも一本のナイフを持っている!」
どういう意味か。それは深く考えない方がいいだろう。

「見るだけで触れることができない恋人なんて、寂しいねぇ」
「僕は、彼女の笑顔を見るだけで幸せだ!」

「彼女の髪は本当に綺麗だ」
そう言い、魔女は指に巻きつけた美しい髪を見せる。
コルムナは見間違えることなどしない。それは確かにクレイスの髪だった。

「私は北の海に住む魔女アイン。そしてこの胸に輝くのは、夜の宝石。こいつを身につけていれば、クレイスの体に触れることができる」
それはコルムナにとって何物にも替え難い、大いに価値があるものだった。

「これがあれば、クレイスの手を握ることも、体を抱きしめることも……そして、あの可憐な唇にキスすることもできる」
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魔女の囁き。
コルムナはその誘惑を我慢し、笑顔だけで満足だと主張する。しかし……

「私も女だからよくわかる。クレイスはあんたに抱いてほしくて、ホントは毎晩泣いてるんだよ?」
「貯金と株と国債と、あとビンテージもののジーンズコレクションをネットで売れば……」
あら可愛らし、コルムナ^^
しかし、彼のあっという間の心変わりはクレイスのためのものであるということを忘れてはいけない。

「この宝石の代価に私が欲しいものはただ一つ。北の島の造船所に、一隻の船がある。その船を動かしてほしい」
単純な条件に聞こえるが、その裏はどうなっているのだろうか……


暗転。


出番のないタクトは客席を上から眺め、様子をうかがう。

「来てる」
目的の女性が見つかったところで……

「誰探してるの?」

ワコも興味を持って客席を眺める。そこには本土から来ている人もいて、演劇をしている彼女たちにとっては嬉しい限りだろう。

「急いで。次の幕だよ」
サリナに呼ばれ、二人は準備に戻る。



コルムナは船を動かした。
それはただの船ではなく、空を飛ぶ船であった。彼は自分が動かす船の力に酔いしれた。

「僕の望むとおりに、こいつは大空を自在に飛び回る! 凄い力だ! もう僕は、昨日までの僕とは違う!」
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もう何も恐くない。彼はそう思ってしまっただろうか……

コルムナはその船で世界を飛び回った。しかし、魚の惑星は空を飛ぶことをタブーとしていた。城の高い塔にいる女王の部屋に近付くのはタブーで、トビウオですら許されなかったのだから。

「餌だ餌だ! サメの餌だ!」

この魚の惑星では、支配者は一番高い所にいなければならない。そう考える女王は高みを自分だけのものだと主張し、それを脅かす存在をサメの餌にするよう命令する。
そんな彼女が、背後から刺されることとなる。

刺したのはコルムナ。
「僕は、この魚の惑星の新しい王だ」

女王は崩れ去っていく。

「私の出番は……これ、だけ……!?」
無念……w

王は一番高い所にいなければならない。逆に言うと、一番高い所にいける者こそが王なのである。

「そしてコルムナは、魚の惑星の王となった」
「それでクレイスは…? 彼女はどうなってしまったの?」
マルクのその問いに答えるのは……

「ヒャッホー!! ハハハハハ!」

コルムナ。
船に乗って惑星を自由に飛び回るうちに、彼はいつしかクレイスへの想いを忘れていった。この時にはもうクレイスの姿が見えなくなったのかもしれない。

「おいコルムナ! 君はそれでいいのか!?」
マルクはコルムナに呼び掛ける。

「君の幸せそのものであるクレイスを見失って、君はいったいどこへ行く!?」
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その声も届かない。
彼はもうこの船で世界を手に入れてしまったのだから。

「それは困る」

どこからか声が聞こえてくる。船は私が貰う約束なのだと。
その声に対し、コルムナは自分のものだと主張するが、そんな彼に現実が突きつけられる。

「もはやお前は、船そのものだ」

魔女の囁き。
それにコルムナは絶望する――――



『劇団“夜間飛行”による“神話前夜”は、これより休憩に入ります。後半の上演は、約15分後です』
『みんな! 最後までバビューンと見てくれよ!』

とことで、会場に光が戻ってくる。
カナコとシモーヌが並んで座っている席の後ろでは、ケイトもこの演劇を鑑賞していた。

「それなりに興味深いわ」

この演劇のことをそう評する彼女だが、彼女のその性格を考えるにそれはなかなかに高い評価というところだろう。

「なんだか悲しいお話よね。結局、コルムナは愛より野心を選んじゃった…。でも、クールな委員長さんは、ビジネスライクな人生の方が納得できるって感じ?」
「……あたしは…………それでもクレイスは幸せなんだと思う」

経験者は語る…といったところだろうか。


「冷たいっ!」
自動販売機でジュースを買うワコ。
彼女に、一人の客が近付いてくる。

「歌。とっても素敵でした」
そう言う女性は服装から察することもできる通り、本土から来た人であった。
この舞台を見るためにわざわざ来たというのも間違いではないが、正確にはそうではないという。

「どちらかと言うと……あなたを見に来たの」
「え……?」
「タクト君が好きになった子が……どんな女の子か見に来たんです」
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男の子かもしれなかった。しかし、女の子で一安心といったところだろうか。


後半へ続く……


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