その天気は予報によると、午後から久しぶりに晴れるとのことだった。
桂馬が書く告白シナリオは、それにより成功率が上がる。
「ま、僕の攻略に失敗はないかな」
最初は乗り気でなかったものの、今は全力で取り組んでいるようで何より。
男子キャラの攻略にギャルゲーのノウハウが応用できるのは意外な発見。それはちひろが個性がない女子だからこそか。
そう考える桂馬であったが、その考えにエルシィは頬を膨らませ、ちひろにもいいところがいっぱいあるのだと言う。
「明るいとことか、前向きな性格とか、ポジティブな姿勢とか…」
同じでんがな(´・ω・`)
朝。
ちひろが携帯を開くと、そこにはオタメガ(桂馬)からメールが届いていた。
『告白の日だ。
時間どおりに来い。』
それだけの淡泊なメール。
晴れてはいないが、雨の降っていない曇り空。
ちひろは一度傘を持たずに出かけようとするも、やはり傘を持って登校する。
公園で時間を潰しつつ、のんびりとした登校。
途中でコンビニLAMSONに立ち寄りほくほく肉まんゲット。一度店の外に出るも、再び店に入っていく。
肉まん二つを提げ、彼女は意気揚々と集合場所へと向かう。
シナリオの最終調整に入る桂馬。
彼は男相手の告白を考えることにアホらしさを感じ始めていた。
それも無理はないだろう。ただでさえ今後に活かせぬ知識だというのに加え、ちひろ自身にあまりやる気がないのだから。
「万事適当で曖昧で、非論理的で…、リアル女はようわからん」
そんなところで、ちひろがやってくる。
「今日は勝負の日だ。僕がセリフ作ったから、参考にしろ!」
そのお礼というわけか、ちひろは桂馬ににくまんを与える。桂馬はそれをガツガツ食べる。
そののち、ちひろは駅前に新しく中華屋ができたという話をする。
「今日一緒に行かない?」
「それはない」
桂馬はちひろの誘いが成立する可能性を否定する。
「今日お前は、ユータ君に告白して成功する。それで僕とお前の付き合いは終わりだ」
そっか(´・ω・`)
ちひろは髪をいじりながら呟く。
「告白……やめよっかなー」
やめるか……(・_・)エッ..?
桂馬の今までの努力は何だったか。
怒った桂馬はシナリオを叩きつける。
「人の努力を、何だと思ってんだ!」
これまで桂馬が出会ってきた者は皆頑張ってたというのに……
ちひろにも少しは真剣になるよう言う桂馬だが、彼女も自分にコンプレックスを抱いていた。何か特別秀でたものを持っていないことは、やはりキツイものか。
告白は中止。失敗に終わる。
それは、桂馬がちひろのことを見誤ったためでもある。
「あいつにも、ちゃんとパラメーターはあったんだ」
他人の恋をプロデュースするのはそれだけ難しいということ。
でも、駆け魂は出す。その責任を全うするため、桂馬はちひろが向かったであろう場所へと急ぐ。
船の上。
そこで憂鬱な表情を浮かべるちひろを発見し……
「早まるなー!」
決死のタックル。これで身投げは免れたか。
する気は全くなかったようだけど(´・ω・`)
ちひろは自分がいい加減な女であることを認め、何をしても平凡だと言う。だから真剣に生きることをしようとしないのだという。
でもそれは嘘。彼女はもがいているはず。
雨が降り出してくる。
ちひろが、好きでもないくせに男を追いかけるのは、光ってる人への憧れである。それを追っている間は自分にも輝きを感じるのだと。
桂馬と似た者同士かと思ったが、決定的な違いがあった。
「僕は確かに、リアルに絶望してる。だけど、自分には絶望していない」
今が面白いかどうかを決めるのはリアルの側じゃない。
「決めるのは僕だ。僕が望めば、不可能はない」
ちひろも望めば可能性は広がるはず。
だけど、彼女はそこに限界を作ろうとしてしまう。
「僕も、お前を平凡だと思ってた。でもお前が、一番個性があったのかもしれない」
ちひろの悪口はSランク。
桂馬を見事に打ちのめしたのだから、それは充分に“輝き”と言える。
ここまで何人もの女の子を攻略してきた桂馬が言う。
「ちひろが望めば、できるよ」
どうせ平凡だと言い傘を振り上げるちひろ。
そんな彼女の隙を突き、(^з^)-☆Chu!!
雲間から光が差し込み、天使の階段ができあがる。
「ちひろなら、できる。不安になった時は、いつでも僕が助けてやる」
後光が差してます(´・ω・`)
そんな桂馬に支えられ輝きを見出したちひろからは駆け魂がでてくる。それをエルシィが拘留し、無事解決^^
後日。
ちひろはバンドを始めたのだという。
自分の人生はボーカルだという彼女は、エルシィをギターに任命。
エルシィの人生はちひろの伴奏(´・ω・`)
支えてくれる人がいて、変わらないものがある。
それにより、ここで迷わなくてもいいのだと気付くことができた。
今はもちろんのこと、きっと彼女の未来は輝いている。
皆リアルで必死に生きている。
それを目の当たりにし、桂馬の考えも変わりつつあるか……
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