あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 11話『あの夏に咲く花』 後半

「めんまのお願い……ね。もう叶っちゃってたみたい」
「え?」
「めんま、思い出したの。 じんたんのおばさんと、お約束したこと」


「――ただね。 一つだけ、仁太は泣かないの」
塔子さんはそのことをめんまに話す。

「生まれ変わりは楽しみだけど、それだけが気がかりで…」
林檎を切る手を止め、外を見つめる。

「いっぱい我慢させちゃって……。ホントはもっと笑ったり、怒ったり…、泣いたり…してほしかったな」

「わかった! めんま、約束する! じんたん、絶対泣かす!」
ありがとう、めんま。

「じゃあ、お願いしちゃおうかな」
「うん!」

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だけど、ちょっぴり不器用なめんまはどうすればいいのかわからなかった。
だから、皆にもお願いしようと思って、お電話して集めた。

『めんまが……ここに戻ってきてまで……叶えたかった願いは……』

あの日、結局はうまくいかなかった。
「じんたんに内緒にしてた……バチが当たったのかな…?」
「バチなんかじゃねぇよ! 俺は行くんだよ。内緒とか関係ねぇだろ。 いつだって……何だって行くんだよ。あの場所に!」

じんたんは再び涙を流す。
それは嬉しいこと。

「でもね。 めんまホントは、じんたんの笑った顔が好き…」

じんたんの頬に触れていためんまの手が、優しくも力なく下がっていく。

「そろそろ……バイバイの時間かな…?」

まだだ。
まだダメなんだ。
じんたんだけじゃダメなんだ。

じんたんはめんまを背中に背負う。

「俺、会いたかった。 ずっとお前に会いたかった! お前の名前呼びたかった! お前に謝りたかった…。 好きだって言いたかった。 でも! みんな同じだった。 みんなお前が好きだった! みんなお前に会いたかった! みんながお前を…俺たちを待ってるんだ! あの……俺たちの場所で!」

じんたんは走る。
一刻も早く、一秒でも長く、皆と一緒に過ごせるようにと。

『俺、お前とずっと……!』
『ずっと、じんたんとこうしてたいって、思うくらい……』


じんたんは皆の待つ秘密基地へと駆けこんでくる。
そこでめんまはじんたんの背中から地面に降り立つ。

「めんま…? めんま! めんま!!

じんたんも、めんまの姿を確認できなくなっていた。
何度もめんまのことを呼ぶ。

「か……かくれんぼだよ?」

めんまの声は聞こえる。
だけど、その姿は……

「めんまー!!」

じんたんはめんまの名を呼び外に駆けだし、ゆきあつたちもそれを追って後に続く。

一人秘密基地に残っためんまはまだだと言う。

「まだ、ちゃんと、お別れしなきゃ……」

外で懸命になってめんまを探す皆に対し、

「まーだだよー」

もう自由に動かすことのできない手を駆使して、めんまも懸命に筆を進める。

「もう……少しだけ……」


もう夜が明けて明るくなってきている。
物凄く懸命にめんまを探しているものの、未だめんまは見つからない。

「やっぱり……もうめんまは……」

信じたくない。
でもそう判断せざるをえないのか。
このままでは超平和バスターズの誰も救われないというのに……

そんなところで、
「何、あれ……?」

あなるは置き手紙を発見する。
それは日記を使ったものであり、歪んでいながらもそれは確かにめんまの字であった。


つるこへ。
やさしいつるこがだいすきです。

「めん、ま……」

ゆきあつへ。
がんばりやさんのゆきあつがだいすきです。

「っ…………!」

ぽっぽへ。
おもしろいぽっぽがだいすきです。

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

あなるへ。
しっかりもののあなるがだいすきです。

「…………っ!」

じんたんだいすきです。
じんたんへのだいすきは、じんたんのおよめさんになりたいっていうそういうだいすきです。

「…………!」
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皆一様に声にもならない思いを抱く。

『間に…合った。 今度はちゃんと……お別れ…できたよ。 もう……』

さよならの言える別れは幸せ。
だけど……

「何だよこれ…。何なんだよめんま……! かくれんぼなんだろ? だったら……お前見つけなきゃ、終われねぇだろぉッ!!

それが本当の終わり。
だからじんたんはそのルールに則って叫ぶ。

「もーいーかーい!!」

それに従い、皆も……

「「「「「もーいーかーい!」」」」」

それが探す者の言葉であり、隠れたものはこう言わなければならない。

「もーいーよー!」

その声は必ず探している者に届く。
だから今この時だって、めんまの声は皆に届く――!

「めんま…!」

あなるの向いた先。
そこに確かにめんまがいて、皆は彼女を見つけることができた。
めんま……

「こういう時は、お名前言うのと違うよ」

そう。
見つけたら、ちゃんと言わなければならない。

「それで、ちゃんと、おしまいでしょ?」

でもね。
本当に幸せになるために。

「手紙、読んだぞ! 俺も大っ好きだぜ、めんま!!」
「私も、大好きよ!」
「めんま大好き!!」
「俺ももちろん大好きだー!!」

お別れはどちらか片方が言うものではない。
両者がそれを言えてこそ、初めて“さよならの言える別れは幸せ”だと言えるのだ。
な、じんたん。

「……願い、叶えてくれてありがとな。 大好きだ、めんま」

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『あー! じんたんまためんま泣かした!』
『じんたん』
『コラじんたん!』
『えー!?』
『泣ーかしたー泣ーかしたー! せーんせーに言ってやろー!』
『ぽっぽ! てめぇ裏切ったな!?』

そんな楽しい光景。
あの夏の日の思い出が確かに甦る。

「めんまね! もっと…みんなと一緒にいたい…! 遊びたいよぉ…。だから…生まれ変わりする…。みんなと…っ、一緒…なるの…っ。 だから! じんたん…泣いたよ…。お別れしたよ…っ。 だから!」

「せーのーっ!!」
「「「「「めんま! 見ぃーつけた!!」」」」」

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「見つかっちゃっ――た――――」



『めんまは……やっぱり笑った』

あの夏の日の思い出と、同じように。



俺たちは、大人になっていく

どんどん通り過ぎる季節に、道端に咲く花も、移り変わっていく

あの季節に咲いた花は、なんて名前だったんだろう?

小さく揺れて 触れればチクリと痛くて 鼻を近づければ 僅かに青い 日向の薫りがした

次第に、あの薫りは薄れていく

俺たちは、大人になっていく

だけど……あの花は……きっとどこかに咲き続けてる

そうだ。俺たちは、いつまでも…… あの花の願いを 叶え続けてく

超平和バスターズはずっとなかよし


私はもう知った。
めんまの名前を決して忘れない。




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